1. 童話と伝説
2.グリム兄弟の業績
3.童話の収集
4.「シンデレラ」
ちなみに、ヨーロッパ内の文化的な関わりを示す顕著な例に、シンデレラの話があります。
この作品のモチーフは、ご承知のように、継子いじめです。
この Cinderella の綴りを、分解すれば、cinderella にわかれます。
cinder は、マキを燃やしたあとの燃えがらとか灰のことですから、
Cinderella は灰まみれの Ella 、まあ、灰だらけの女の子といった意味になります。
ペローの童話には Cendrillon「サンドリヨン」というのがありますが、
これも cendre (同じく灰という意味です)に、縮小語尾の illon がついたものです。
この話と同類のものが、グリムの童話にもあります。
タイトルは Aschenputtel (KHM21) となっていて、
Asche の意味は、やはり cinder と同じく、燃え殻です。
この作品の邦題は「灰かぶり」です。

Das Bild links:
gemalt von Janusz Grabianski

aus:
Brüder Grimm. Kinder- und Hausmärchen.
Verlag Carl Ueberreuterm,
Wien-Heidelberg. 1971

Märchen 全体に関する研究には、あれこれの方法があります。
純粋に文学作品としての鑑賞や、上で触れたような Textkritik(原典批評)や、
あるいは民俗学的に追求するとか、社会学的または心理学的な観点からの研究とか、
そのアプローチの仕方は種々様々です。
そして、それは個々の作品についての研究や解釈においても、同様です。
Sagen に比して、Märchen の方は、全体として見れば、素朴で家庭的で、救いがある。
これはオーソドックスでまともな捉え方です。
それはじゅうぶんに認めた上で、それでも、詮索をすれば、
その穏やかそうなストーリィの中にも、種々の問題が散見されます。
それで、ここでは、敢えて、次の項で、問題点をいくつかピックアップしてみたい。
5.「蛙の王さま」他
6.「千びき皮」とオイディプス伝説
7.ドイツのある大学からの依頼