1.童話と伝説
左図は、エーリヒ・ケストナーの
Roman für Kinder
(子供たちのための長篇小説)
『エーミールと探偵たち』(1928)の表紙

Abbildung links:
aus: Luiselotte Endere,
Erich Kästner,
rowohlts monographien Nr.120.
Rowohlt Taschenbuch Vlg.,
Reinbek bei Hamburg, 1966, S.53

メールヒェンは、大きく分類しますと、
Volksmärchen(民間童話)と Kunstmärchen(創作童話)になります。
グリムの童話とか、フランスのぺローの童話は民間童話に属し、
アンデルセンや E.T.A. ホフマンの童話などは創作童話ということになります。
かのグリム兄弟は昔話を収集したわけですが、
彼らの集めたものは、伝説 (Sage, pl.Sagen) と童話 (Märchen) です。
Sagen の方は主人公はだいたい大人で、話はかなり深刻で、
赤裸々なものでもあり、また宗教的に厳しい面をも含んでいます。
結末は概して悲劇的です。
例えば、「クッテンベルクの三人の鉱夫」では、
坑道に閉じ込められてしまった三人の鉱夫の願いを、神は聞き入れ、
三人ともいちおう無事に、外界へ出してやるけれども、
「ああ、もう一度、日の光りを見ることができるならば、死んでもよい」
と言った男にたいしては、その言葉どおりの死を授け、
「もう一度、わが妻と食卓を共にすることができるならば、死んでもよい」
と言った男にも、その通りの死を与え、また、
「もしも一年だけでも、妻と、平和に、満ち足りて過ごすことができるならば、、、、」
と言った男も、きっかり一年後に死を迎える。
そして、はなしは、
「神は、かれらの敬虔さのゆえに、その願いを叶えてやった」と締めくくられています。
そのような、なかなか厳しい背景をもった Sagen に対し、
Märchen の方は、素朴で、家庭的であり、人間の夢や理想が描かれており、
話はだいたいハッピィエンドで、そうではない場合にも、
ふつうは、その結末は何がしかの救済(Erlösung)を含んでいます。
しかしながら、そのようなMärchenでも、少し詮索をしてみますと、
その中にある種々の問題が見えてきます。
例えば、いじめとか、不倫とか、傷害事件や殺害などです。
2.グリム兄弟の業績
3.童話の収集
4.「シンデレラ」
5. 「蛙の王さま」他
6.「千びき皮」とオイディプス伝説
7.ドイツのある大学からの依頼