1.童話と伝説
2.グリム兄弟の業績
3.童話の収集

ニュルンベルクの都市貴族シュトローマー家の玩具の人形の家
(Puppenhaus der Nürnberger Patrizierfamilie Stromer)
17世紀前半のもの、ニュルンベルクのゲルマン国立博物館所蔵

Aus:
Inter Nationes, Kunst- und Kulturlandschaften in der Bundesrepublik Deutschland,
Verlag Georg D. W. Callway, München, 1978, S.46f.

さて、グリムの童話のことに入ります。
まず、この童話集の収集に関しての話です。
この童話集は、主にヘッセン地方の人が語った話を集めたものですから
(ほぼ全体の3分の2と言われている)、
「この地方の郷土的なお話であり、つまりはドイツの風土を物語ったものである」
という風に、ずっと長いあいだ、一般には、理解されておりました。
しかし、比較的最近のTextkritik(原典を探る研究)によって、少し意外な事実がおもてに出てきました。
つまり、これらの物語の収集された場所は、たしかにヘッセン地方ではあるけれども、
その地方で、物語をグリム兄弟に聞かせた人々の素性はどうだったのかということを調べ始めたら、
単純に郷土的な話ではすまなくなった、ということです。
たとえば、「赤ずきん」(Rotkäppchen)(KHM26)とか (KHMKinder- und Hausmärchen の略号)、
「いばら姫」(Dornröschen)(KHM50)や「ヘンゼルとグレーテル」(KHM15)といった、なじみ深い作品が、
じつは、「16世紀の宗教改革のおりにフランスで迫害を受け、
ドイツへ亡命ないし避難してきたユグノー派(huguenot)の人たちの
子孫から収集されたものである」、ということが分かってきたということです。
従って、
グリムの童話については、ドイツばかりではなく、フランスも含めて考察すべきであること、
ひいては、ヨーロッパ全体という枠で考察することが必要になってきた、ということです。
グリム兄弟は、
明らかにフランス系と見られるものは、最初から、あるいは改定版などで、除外はしてきたのですが、
例えば、「青ひげ」とか「長ぐつをはいた雄ねこ」の類いです。
しかし、これぐらいのことでは、「フランスとの関わりを断ち切れなかった」、ということにもなります。
そして、そうなってくると、当然、
フランスの童話収集家シャルル・ペロー(1626-1703) の作品との比較も、あらためて、問題になってくるでしょう。
グリムの童話は初版が1812年ですが、ペローの「童話集」の出版のほうは1697年にさかのぼるのですから。
4.「シンデレラ」
5.「蛙の王さま」他
6.「千びき皮」とオイディプス伝説
7.ドイツのある大学からの依頼