比較文法(ドイツ語と英語)




分詞とは動詞の形容詞的な形であり、そのために動詞と形容詞、この両方の性質を合わせ持っているが、我々の把握としては、分詞を、広い意味で形容詞の仲間(これはとりわけドイツ語には当てはまる)と捉えておいて差し支えない。

現在分詞 ― 動作が継続中であることを意味する: A
過去分詞 ― 動作の完了(ただし、他動詞の過去分詞は受動、自動詞の過去分詞は能動を示す): B
未来分詞 ― 受動的な可能・当然を意味する: C
(未来分詞は書きことばにおいてのみ。英語にはない。)
A
B
C
laufend, schlafend running, sleeping
geehrt, gefallen respected, fallen
zu lobend to be praised



1) 付加語的用法:
das brennende Holz the burning wood
ただし、この用法における現在分詞の位置については、現在分詞が単独であれば英独共通とみなされるが、
しかし目的語や状況語を伴う場合、つまり分詞句を構成しているとき、英語では、後置させる。
Er faßte das vor ihm stehende Glas.
He seized the glass standing in front of him.

2) 述語的用法:
Die Ähnlichkeit der Geschwister ist auffallend.
The similarity of the sisters is striking.

ただし、分詞とは動詞の形容詞的なかたちではあるが、その中に、完全に形容詞に転化したものと、まだ動詞の性質を残しているものとがある。
ドイツ語においては、動詞の性質を残しているものは、述語的には使用せず、単に動詞の現在形で表現する。
英語においては、動詞の性質を残していても、述語的には使用でき、いわゆる現在進行形のかたちとなる。
Das Kind shläft. The child is sleeping.

3) 副詞的用法:
Die Dame trat ein, tanzend.
The lady came in dancing.

4) 名詞化:
ein Reisender a traveller
(ドイツ語においては一般の形容詞と同じ扱いで名詞化される。英語においては、the+形容詞は複数概念 (the rich) であるが、現在分詞は余り用いられていない。)



Melancholia I - Albrecht Dürer
(1514)


過去分詞が完了形(§8)と受動態(§11)に用いられることはすでに触れたが、ここでは少し観点を変え、現在分詞の場合と同じように、過去分詞を形容詞の範疇と見て、用法を4種類に分類する。

1) 付加語的用法:
自動詞、 他動詞どちらから派生しているかによって意味合いが変る。他動詞の過去分詞は「〜された」という受動の意味をもち、自動詞(丁寧に言えば、場所の移動や状態の変化を表わす自動詞)の過去分詞は「〜した」という能動の意味をもつ。
ein weich gekochtes Ei a soft-boiled egg
der gefallene Engel the fallen angel
この観点から、ドイツ語の完了形のかたちを捉えなおせば、habensein の使い分けも理解できる。
Ich habe Kartoffen gekocht. 茹でられたジャガイモ(を持っている)
Er ist gefallen. 落ちた(状態にある)

2) 述語的用法:
Das Dorf ist von Paris weit entfernt.
The village is far from Paris.
Das Gericht war gefroren.
The dishes were frozen up.

付け加えれば、状態受動の文においても、過去分詞は形容詞に近いことが見て取れる。
Das Museum is geschlossen seit einer Woche.
The museum is closed for a week.

3) 副詞的用法:
Er ging beruhigt nach Hause.
He went home peacefully.
なお、他の状況語を伴って過去分詞句(現在分詞句も可)のかたちで表現したもの(いわゆる分詞構文)については、次の補足で取り上げる。

4) 名詞化:
ein Gefangener a prisoner





 1) 分詞構文
分詞句を用いた副文章の短縮形と解される。言い換えれば、複合文章を単一の文章で表現している。基本的には分詞句の主語は、主文の主語ないし目的語に合致する。
Er ershien, von Dienern gefolgt.
He appeared folowed by servants.
Die Nachricht hörend, brach sie in Tränen aus.
Hearing the news, she burst into tears.
この分詞構文の特徴は、短い表現で、場面を生き生きと描き出すことにある。とりわけ、英語において発達し、大いに利用されている。しかし、ドイツ語においては、この構文をあまり使用せず、一般には、従属の接続詞 als, nachdem, weil, wenn etc. を用い、副文章のかたちで表現することの方が多く、文章全体としては、英語よりも重たげになる。
Sleeping on the bench , I dreamt a strange dream.
Während ich auf der Bank shlief, hatte ich einen seltsamen Traum.
She looked down upon him for not having his word.
Sie verachtete ihn, weil er sein Wort nicht gehalten hatte.

 2) 冠飾句
英語で多用されている分詞構文に対して、ドイツ語でかなり使われているものに冠飾句というものがある。この形は英語にはない。
この用法は、ドイツ語において、口語ではほとんど使われないが、書きことばとしては、関係代名詞の重複を避けるためもあり、かなり好んで用いられる。
これは、現在分詞および過去分詞の付加語的用法に属し、また副文章の短縮とも関係するが、それが長い形容句(分詞句)になった場合ドイツ語では、特に「冠飾句 (erwetertes Attribut)」と呼んでいる。この用法は口語では使われないが、書きことばにおいては、関係代名詞の重複を避けるためもあり、好んで用いられる。ドイツ語でこのような形が発達したのは、冠詞その他の変化が豊富なので、修飾される名詞との関係が明白であることに因る。語形変化のきわめて少ない英語においてはこの形は不可能ゆえ、分詞句は名詞の後に回すか、または関係文章で表現することになる。
Das auf dem Tisch liegende Buch gehört meinem Bruder.
The book lying on the desk belongs to my brother.
Der wegen seines Witzes bekannte Wiener Professor T. wurde von einem Studenten gefragt, ...
The Viennese professor T., well-known for his wit, was asked by a student ...
Die Dame hatte ein ihr gar nicht passendes Kleid an.
The lady was wearing a dress which did not suit her in the least.

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