Adam und Eva Albrecht Dürer, 1507
Museo National del Prado, Madrid
英語においては、文章中に、受動態がかなり頻繁に見られるが、これは英語では S + V + O の配語法が厳格なため、目的語を強調するひとつの手段として、受動態を好んで用いる、ということであろう。
ドイツ語では、受動態は形式的で冗長な感じになってしまうせいか(枠構造とか、自動詞の場合には非人称の主語を必要とするとかの故にか?)、口語ではあまり好まれない。そしてどちらかというと、この受動態に代わる他のもう少しすっきりとした表現を求めようとする傾向が強いようだ。
つまりこれは、形の上では一応、能動文なのだが、受動に類似したほかの表現、たとえば「一般に人は」という表現とか、再帰代名詞を使うことによって、「おのずから〜する」という形で「自然に〜される」というふうな意味合いを出す、というやり方、などである。
その例をいくつか挙げれば: 1) man を主語にする。英語では、受動文でぜんぜん構わない。
Man wird die Ausstellung bald eröffnen.
The exhibition will soon be opened.
2) sich + 他動詞
Die Tür öffnete sich und schloß sich sofort wieder.
The door was opened and was closed immediately again.
英語でも古くは The door opened itself. の形があったが、この再帰代名詞 oneself が重苦しい(ドイツ語の sich フランス語の se イタリア語の si はきわめて軽く、それぞれ大いに利用されている)。そのためこの oneself が省略された形である「能動的受動 (activo-passive) 」というものまで現われてきた。
The book sells well.
Das Buch verkauft sich gut.
3) sich + 他動詞 + lassen の形もおおむね受動の意味をもつ
Sie läßt sich leicht betrügen.
She is easily deceived
Dieses Wort läßt sich nicht leicht in eine fremde Sprache übersetzen.
This word is not easily translated in another language
4) 受動的な可能・当然の意味を表現する sein + zu 不定形 の形
Die Ursache war nicht zu finden.
The cause could not be found.
Das Signal ist nur im Falle der Gefahr zu geben.
This signal is only to be used in case of emergency.
英語にも She is much to blame. のように be+to 不定詞 の表現が古い形の名残として一部に見られるが、一般には、(上の例にもあるが)
14・5世紀から be to be + pp という(受動として)明瞭な形が用いられるようになった。