ブラウンシュヴァイク工科大学  
心理学研究所 発達心理学科  
カーレン・ヤーン作(T.Kamata 訳)

page 2
 「光の国に着いた」と、イングラバンが言いました。
 「とても美しい国だわ。すてきな花がこんなにたくさんあるし、それに緑の丘も」と、二人の少女はびっくりして言いました。
 宮殿は、緑の谷に、ずっと昔からある森に包まれて、建っていました。その宮殿にはたくさんの高い塔があり、それらの塔の屋根が、日の光できらきら揮いていました。
 イングラバンは、ふたりの少女を、すぐに王さまのところへ連れてゆきました。王さまは家来が来るのをもう待ち受けていました。
 王さまは、カティンカとマルシュカが喜んで助けたいと言うのを聞くと、とても喜びました。王さまはとても心配だったのです。
 なぜなら、あの竜がこの国で何をしようとしているのか、そして、なぜあんな大きな石の壁を築いているのかが、わからなかったからです。
 しかも竜は、ちかごろ、昼も夜も仕事をしていました。まるで、その防壁を作り上げるのをとても急いでいるようでした。
 これはいったいどういうことを意味したのでしよう。
 翌朝、カティンカとマルシュカは、イングラバンといっしょに、光の鳥のところへ行かせてもらいました。
 光の鳥は、ちょうど、王さまの庭にあるちいさな池で、そのきれいな水をすこし飲んでいたところでした。そのきらびやかな羽根が、あかるく揮き、池は、こがね色に光って見えました。
 イングラバンは、あの暗い秘密の通路を照らしてくれた羽根の、お礼を言いました。
 「私はあなたにあの羽根をよろこんで与えました」と、その美しい鳥は言いました。
 「なぜなら、あなたはあの羽根でよいことをしたからです。しかし、悪いたくらみをもった人聞は、私から羽根をもらうことはできません。
 カティンカとマルシュカ、私はあなた方ふたりが、無事に、そしてすぐに、あの竜の洞窟から戻ってくることができるように、析っています。
 私は、いつも、あなたたちの心の中にいるでしょう。だから、もしあなたたちのどちらかが、助けを必要としたときには、私のことを思い浮かべなさい。」
 「どうもありがとう」と、ふたごのきょうだいは答えました。「私たちがあなたたちを助けることができるといいんだけれど。」
 それから、小さな家来のイングラバンは、少女たちを宮殿の庭の端まで連れてゆきました。三人は、せいの高い門を通りぬけ、そして、ある細い山みちに達しました。
 「この道はまっすぐ竜の洞窟へと続いています」と、イングラバンは説明しました。
 「これから先は、君たちだけで行かなけれぱならないでしょう。成功を祈る!」
 イングラバンは、勇敢に先へ進んでゆくカティンカとマルシュカに、手を振って、別れの合図をしました。
 ふたりがしぱらく行くと、誰かが石を打ちくだいて、そしてそれを積みかさねているような音が聞こえてきました。
 山みちの最後のカーブを曲がると、ついに竜が見えてきました!
illustrated by
shiro-k
1999
 竜は、カティンカとマルシュカが想像していたほど、そんなに大きくは、ぜんぜんありませんでした。
 それでも、かなり無気味に見えました。うろこだらけの皮膚が、奇妙な色に光っていました。
 そしてその長くて強いしつぽで、洞窟の近くの岩を打ちくだき、いくつもの大きな石にして、それからすばやく行ったり来たりしながら、それらの石を積み上げて、石の壁を築いていました。
 右の壁は、もうかなりの高さになっていました。
 その高い壁の向こうの、夕日の国へと続いてゆく道は、もはやすでに見ることはできませんでした。
 石の壁の両側には高い山があって、向こうの国への通行をふさいでいました。
< page 1