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荷物だけ預かってもらうことにした。
ついでに、手洗いを借りようとしたら、6階とのこと。
エレベータを二つ乗り継いで上がってゆくも、
6階には、左右にひとつづつドアがあり、両方とも鍵が掛かっている。
ひとつ下の階に下りてみると、下働きの兄ちゃんがいた。
何とか用件を伝えようと、ごたまぜの言葉で話しかけてみた。
「フランス語が少しわかる」と言う。
こちらのフランス語もおぼつかないものだが、何とか意は通じた。
が、「自分の持ち場を離れるわけにはゆかない、自分の分限でもない」ようで、
フロントに電話をかけ、受話器をこちらに渡し、「あなたが用件を話してくれ」と言う。
フロントは「まちがいなく6階に行ったのか」と、階数のことで念を押し、
「もう一度上がってみてくれ」と言う。
ふたたび上がってはみたが、開かないものは開かない。
呆れて、「ぜひとも用を足したい」というわけでもないゆえ、
地階まで降りて、フロントの脇を通り、外へ出ようとすると、
「トアレッテはわかったか」などとぬかす。
「右も左もドアは開かない」と言うと、ひとり(若い女性)が、
「それでは私がいっしょに行きます」というので、(これで三度目)上がった。
当の6階で、彼女も、われわれと同様、右側のドアも左側のドアも開けられない。
ドンドンドンとノックをしても応答はない。
手持ちのカギ束のひとつでガチャガチャやってたが、びくともしない。
と、誰かの名前を大声で呼び始めた。やはり反応はない。
こんどはケータイを取り出して、何か連絡をしている。
しばらくしてようやく、左手の内側からドアが開いた。
そこは屋根裏部屋風だが、割と広く(翌朝はここで朝食をとった)、
その左奥が手洗いになっていた。
いやはや、トイレひとつでおおごとだった。
アバンド駅(レンフェの駅)を確かめに行く。
その途中、イングレスの袋を持っている若い奥さんが目に入った。
声をかけて、場所を聞いておく。
ビルバオの町は思ったよりも大きい。
また、とくに何もない町かと想像していたのだが、意外に見るところがある。 |