'09年・スペインに憑かれて >>
10-1.<< 8/12(水)ビルバオからブルゴスの新駅へ >>
アバンド駅で、特急アルビアに乗る前、アナウンスがあり、列に並ぶ。

年輩の太めのおばさんに「(お先に)どうぞ(シルブプレ)」と譲ると、

ニコッとして礼を言ってから、話しかけてきた。

「パリには数年のあいだ住んでいた。私はバスク語は少しもわからない。

あなたは方は観光で来たのか。どこから来たのか? おお、日本か? 

日本語も難しい言葉で、私はわからない」などなど。

車内は乗客がまばらで、快適な旅。途中の分岐駅でかなり長く停車し、

5分ほど遅れてブルゴスに着く。

ところが、停まった駅のあたりの様子がおかしい。

インターネットの航空写真を見てきたが、そのイメージとはまるで違っている。

ここは町はずれの野っ原ではないか。駅名も「Burgos Rosa de Lima」とある。

ブルゴスのメインスティションに「ローサ・デ・リマ」という付けたりの名前はないはずだが。

さてどうしたものかと迷い、通路を挟んで隣のボックスの夫婦に聞いた。

と、「ここがブルゴス駅だ」

そう断言されて、慌てて荷物を持ち、ホームへ降りた。

降りてまもなく、列車はドアが閉まり、出発した。

駅員を見かけたので、この駅のことを聞くと、「ここはブルゴスの新しい駅だ」

「以前の駅はどうしたのか」―「閉鎖された」

これにはまったく驚いた。

「旧市街へはどうやって行くのか」―「この下へ降りて、バスで行け」

ともかくエスカレータで下へ降りる。

必要と思われる地図などを出したりして、用意を整えていると、

さきほどの駅員も降りてきた。「どのバスで、何時発なのか?」

「バスは毎時クワルト(15分、45分)発。

今なら1145分発が来る。25番のバスだ。行く先はプラサ・エスパーニャ」

駅舎の外に出る。目の前がバス停のようで、他にも待っているひとが2、3人。

1台目が来たので、運ちゃんに聞いたら、「このバスは違う」

2台目のバスがスペイン広場ゆきだった。

乗ってから「カテドラールへは行くか?」―「おおよそ」

バスはだいたい西の方角に走り続ける。

どうも新しい駅は、町の東の外れのようだ。 20分ほどで広場に着いた。

離れた前の席のおばさん、そして隣の席のおじさんも、

手振り身振りで、「ここで降りるのだ」と教えてくれる。

カテドラールの方向を、何人ものひとに聞きながら、歩く。

「おおよそ」と言われたので、近いのかと思ったが、意外と距離がある。
今回の旅で、

こんなに道をひとに聞いたのは

初めてのこと。

自分の居場所がわからないのだから、

人に聞かざるをえない。


さいわい、やがて尖塔が見えてきた。

from: BURGOS - Patronato de Turismo
きょうの宿は、このカテドラールのすぐ前、石段を少し登ったところにあった。

フロントのおばさんに、「これこれしかじかのルートでやっとここに辿り着いた」むねを言うと、

「バスは本数が少ない。

スペイン広場からの出発の時間も、ここではわからない。帰るときは、駅までタクシーで行った方がよい」

このおばさんもフランス語がわかる。

「タクシーは使いたくない。徒歩とバスで行きたい」と、このときは答えた。

荷物を置いて、外出する。もとのブルゴス駅のところまで、

あらかじめ予定していたコースを逆方向に、歩いて行ってみた。

と、まさしく、駅舎の全体が閉鎖されていた。

もはや今では使用されていないことは一目瞭然。

そこにちょうど若い兄ちゃんが歩いてきたので、声をかけて、尋ねた。
スペイン語以外の語は

話さないひとだったので、

なかなか話が通じない。

やっと、

「この駅は昨年の12月に閉じられた」

ことがわかった。8か月前だ。

それでは、ガイドブックの類いに

一言も触れられていないことも、

むべなるかな。

The city map above:
from: Baedekers Reisefüher, Spanien; 1992
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