'06年・スペイン彷徨
10-2.<< 8/12(土)グラナダから西走、セビーリャへ >>(2)
(suite)
セビーリャ・サンタ・フスタに着いた。

ホームは地下になっていて、大きな駅だった。

駅舎に上がって、駅員に方向を聞くが、

「この町のことはわからない、インフォで聞いてくれ。」

つい手間を惜しんで、案内には寄らずに、

「駅からは、右寄りに出て、南南西に向かえばよいはず」と、そのことを重々承知していて、

何をどう勘違いしたのか、方位も見ずに、西口から出て北へ向かってしまった。

少し歩いて、あたりがだだっ広く、閑散としていることが変に思えた。

どうも思い描いていた街路の様相とは異なる。

磁石を取り出して、見て、仰天した。まるで逆の方向に向かっていた。

近くの駐車場に、係りがいたので、尋ね、こちらの行き先を確認し、引き返した。
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駅舎の前、南側に広がる広場を見渡して、合点した。

これは想像通りであった。見当をつけて、南南西への道を下る。

通りを確認しようと思うが、いかんせん人がいない。

やっとバールのボーイが出て来たので、聞くが、説明が少しあやふやだ。

そのままもう少し先へゆくと、広い道と交差している。

そこで中年の地元民とおぼしき人に、その横切っている道の名前を聞く。

「ルイス・モントト通り(Calle de Luis Montoto)」。これで間違いない。

また少し行ってから、立ち話をしている初老の二人に聞く。

「まっすぐ行くとプエンテがある、そこを右へ行け。」

たしかに陸橋が見えたきた、が、

「まさかあれを、荷物を持って、登らなければならん、ということはないだろうな」

と思いつつ近づく。

手前までゆくと、品の良さ気なお婆さんが歩いて来る。

声をかけて、ホテルの名前を言って尋ねると、知っていた。

わざわざ角まで戻って、右手の、陸橋と平行な、下の道を指さし、

「まっすぐに、通りを横切って、また、ずっとまっすぐに」、と言う。

「そして、その先きで、右ですね」、と言うと。

「いや、トドレット(と聞こえる:todo recto、他の人の発音も、そうだった)」、

と念を押す。

言われた通りに、大通りを横切る。
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「横切ってから、ちょっとした広場まで、右手に3本の小路があり、

その3本目の小路(袋小路)に入って、突き当たり」、と予想して歩くが、

地図の表示がじつは概略で、右手に入る小路は何本もあり、どれか見当がつかない。

バールの兄チャンに声をかける。

が、この辺りのことはわからないらしい。さっと奥へ急ぎ、マスターに聞いている。

マスターが出て来て、何とかかんとかを右に、と言う。

その「何とか」がわからないが、ともかく、あと二つほど小路を飛ばして、

次に右に入ってみようとすると、こっちの様子を、かなたの店の前で見ていて、

そこは違うという身振りをする。

それでまた少し行き、ちょっと引き返したりもしたが、

何とか、ホテルへの入り口の標識を見つけた。

さっきのマスターはこのことを言っていたのかもしれない。

そして、奥まった、端から見てとてもホテルとは思えない、一角に辿り着く。

フロントも、やや古ぼけた屋敷の入口のようなドアから入ったところにあった。

ボーイが我々の荷物を持って、先導する。

まわりは、まるでアラブの邸宅をうかがわせるような雰囲気で、

そこを、右や左へ曲がったり、上がったり下がったりと、ずんずん奥まで入ってゆく。

この道順は、とても老境のわが頭には入らない。
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部屋に荷物を置いてから、

わが娘を先に歩かせて、フロントまで辿り着き、

そして、外に繰り出す。

町中(旧市街)も、入り組んだ迷路のような小道ばかり。

これはたいへんなものだ、と思えた、

が、このまま保存に努めているところは、スペインもえらい。

明日は日曜日。当然ながら、店は全部休みだろうから、

かの全国チェーンのデパートのスーペルメルカードへ行き、二日分の糧を仕入れ、

重たい買い物袋を両手に下げ、何とか、思い出し思い出し、来たコースを戻る。

連日、相変わらずの快晴。気温は36度。

スペインの日差しは強烈この上ない。それも、毎日。

イタリアのときも暑かったが、スペインはまた格別、の感。
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部屋は、ベットを置いても悠々の、広い部屋が二つ、

手前の方は、応接セットにシングルベット、奥はツインのベット。

間に通路があって、右はクローゼット、中に冷蔵庫も置いてある。

左のドアを開けると、バスとトイレと洗面台。浴槽は大きい。

午後8時ごろ、応接セットに坐って夕食をとる。
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テレビをつけたら、闘牛の中継をやっていた。

もう2番目の闘牛士の番のようだった。

食事をしながら、何の気なしに見ていたが、見てるうちに興味を引かれた。

闘牛士の仕草は、華やかで、機敏、という印象。

すっくと立ったまま、サッと緋色のマントをひるがえし、

頭を下げて向かってくる牡牛を、パッと払う。

最後のとどめの剣が、牛の背中、首すじのすぐ後ろ辺りに、スーッと奥深くまで刺し込まれる、

と、一瞬の間を置いて、牛がくずおれる。

牛を殺して残酷だ云々は、見ていない人の発言ではないか。

一連の所作(儀式?)に見入っていると、不思議なことに、そういう感想はみじんも生じない。

連れどもも、「初めて見たが、認識を新たにした」という。

3番目のマタドールの技は激しかった。

牡牛の勢いも、前のとは違って、荒々しい。

激しい勢いで突進してくる牛を、すれすれのところでかわす。

次のときには(背中に何本かの槍が刺さっているが、そのうちの)一本の(飾り)柄が、

闘牛士のあごを直撃し、飛ばされる。

立ち直って、次の突進のときに、剣をひるがえし、首筋に突き刺すが、奥までは入らなかった。

その次の回に、やっと仕留める。9時過ぎ(日没?)までの中継だった。
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今日のワイン、€14.9 Ribera del Duero はいい味だった。

産地はセゴビアの北。等級はクリアンサ(crianza)。
この次は、この上のレセルバ (reserva) にしてみるか。

ともかく、もう完全にスペインのワインを見直した。

イタリアのものよりまちがいなく上等だ。

ボルドーよりもコクがある。

ボルドーも、古いものはおししくて、コクもあるのかもしれないが、

こちとらは、高価なものは飲まないことにしている。

スペインの北部産のワインは、10年もので、€15 から€20 。そして味は、紛れも無く本物。


サラミ風腸詰め(サルチチョン salchichón)も、マラガ以来、ほぼ毎日、

柔らかめの、中身がほとんど生に近いものを(常温で陳列してあるものの中から)

選んで買い、食べている。

いくらでも食べられる。じつにいい味だ。
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