'04年・フランス漫歩の巻
19.シャルル・ド・ゴール空港へ
ふたたび、12号線に乗り、コンコルドで1号線に乗り換え、

テュイルリーで下車して、ジャルダン・デ・テュイルリーでひと休みをする。

風がある。

まもなく空に黒い雲が広がり、ポツリ、ポツリと降ってきた。

これは危ない。

広げていたものをあたふたと片づけて、メトロの駅へと急いだ。

東駅で預けた荷物をうけ出してから、北駅へ行き、RERに乗り換え、空港へ向かう。

このRER l'Aèroport CDG1 までノンストップだった。

こちらは次の終点の駅 CDG2 で降りる。

動く歩道を利用しながら、ホールFの方向へ向かう。

総ガラス張りなので外がよく見える。

外は土砂降りだった。

ホールF に着いてから、チェックインカウンタまで、また歩く。

延々と歩かされるが、この空港は、進むべき方向がとてもわかりやすくて、迷うことはない。
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チェックイン前に、ひと騒ぎがあった。

警官が、とつぜん大きな声で、

「下がってくれ、ずっと下がってくれ」

と、フロアの一角から人々を立ち退かせ、非常線を張った。

何か不審な物があったようだが、幸い、20分ほど後には、解除になった。
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毎度のことだが、やはり身体チェックにひっかかった。

今回は財布、小銭入れ、コンパス、ボールペンその他、

ポケットの中のものを、ほとんど出したのに、それでも警報装置がなる。

若い女の係官が、小生のチョッキを指して「脱いでくれ」と言う。

チョッキを脱ぐ、がそれでもダメ。

「靴を脱げ。」ぶっきらぼうな言い方で、「どうぞ」も「してくれませんか」もない。

「敏感な装置ですね」と言っても、そ知らぬ顔である。

「靴を脱いで、何を履くのか ?

そしたら、青い色のビニール製の足カバーを、ぐいとよこした。

これでともかく何とか無罪放免になった。

靴を受け取り、立ったままカバーを外して、

バランスを取りながら靴を履こうとしていると、

そばに立っていた若い男の係員が、

「そこの椅子に腰掛けておやりなさい。」と言ってくれる。

靴を履き終わってから「とても厳格ですね」と言うと、

穏やかに微笑んで、「やむをえない」というような仕草をした。

足カバーは、つい、そばの机の下のキャビネットの上に置きっぱなしにした。

いったんそこを離れてから、思いついて、引き返し、

置いた足カバーを取って、さきほどの係員に「これをもらえまいか」と言うと、

使用済みのカバーを入れる箱を示し、「そこへ入れてくれ」と言う。

「日本へのスヴニーア(みやげ)としてもらいたい」と言うと、笑って、承知してくれた。
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固めの乾燥ソシソンを、今回の旅行中に、何度も買った。

ワインにとても合うので、必需品だった。

それが空港の免税店に置いてあった。

一般的なハム・ソーセージは持ち帰り禁止なはずで、もちろん免税店には置いていないが、

これだけは乾燥食品というので許可されているのだろう、と解釈し、何本か購入した。

免税店のものは(衛生上であろう)ビニールで包装してあって、保存の温度は18℃と見える。

シールが貼ってあり、それには8月11日に包装、賞味期限は1010日とあった。

18℃でなら、2か月ももつ、ということか。

免税店では、ボルドーのシャトー元詰めのワインも、数本を仕入れた。

ゲートでは、搭乗券のほかに航空券も提示させられた。

機内への入口でも、フランスの係官が3人いて、乗客ひとりひとりのパスポートを点検した。
l'aèroport de Roissy CDG, vers dix-sept heures, le 20 août 2004
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いつものように、離陸して1時間後に、機内サーヴィスの食事が出た。

そのときにビールを2本、ワインも1本もらい、じゅうぶんに飲んで、食べたら、眠くなり、

どこか寝にくいな、と思いながらも、すっかり寝入ってしまった。

目を覚まして時計を見たら、着陸まであと2、3時間を残すのみ。

シベリア上空を越え、もうすぐ日本海、というところまで来ていた。

(この巻、了)
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