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11.モンペリエからトゥルーズ
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モンペリエ発 9:11 のコライユは、
マルセイユが始発駅で、トゥルーズ経由、ボルドー行きだった。
電気機関車が、今回の旅行では初めての、コンパートメント付きの車輛を引っ張っている。
車室が何となく広い、と思ったら、4人掛け、8人定員の車室になっていた。
車室の相客は、向いの窓際に、20代の真っ黒に日焼けした娘さん。
ずっと眠りこけている。
もうひとり、やはりかなり日焼けした青年。
こちらも、ウォークマン(フランスだからバラデーアか?)を耳に、
あごを胸に埋めて眠っている。
おかげで車室内は音ひとしない。
ter に2回、corail にはきょう初めて、いずれも、予約なしに乗ったのだが、
これらは、座席にわりと余裕があるようで、席を探す苦労はなかった。
このコライユは、時刻表に、トゥルーズ・マタビオ発が11時16分、とある。
いま11時すぎだから、到着にはまだ間がある、と思っていたが、
列車は大きな駅に入ってゆく気配なので、気になって、外を見ていた。
駅名が見えた。
トゥルーズ・マタビオだった。
ここには長く停車するのだろう。
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トゥルーズ駅に降り立つと、駅前を、運河が横切っていた。
予定のホテルは、橋を渡り、二つ目の角を右に折れ、
次の十字路の角に建っている、はずであった。
ところが、角に立ち、あたりを見渡すも、それらしきものは、全然ない。
そのときちょうど、脇の建物の階段を、ビニ−ル袋を手に、おばさんが降りてきた。
「失礼ですが、奥さん、この辺のことに通じていますか。」
笑顔で、「ええ、わかっています。」
「私は○○ホテルにゆきたいのですが。」
少し間を置いてから、わかったという顔で、
通りのかなた(南西)を指差して、
「向うの右手の Hôtel という看板が見えるところです。」
見るとかなた右手に赤い看板が見える。
「ルージュのですか。」
「そうです。」
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ホテルのフロントで名乗ると、受け付けの男が、
「ムッシュー・カマタ、明日からの予約ではありませんか。」
などとぬかす。
「いや、明日からではない、今日からです。」
と言いながら、その男の手もとで開いているノートを覗いてみた。
15日(明日)のところに、小生の名前がメモしてある。
男は、こんどはコンピュータで調べ始めた。
「私は、14日と15日の予約のコンファームを、e-mail で受け取っている。」
と持参のコピィを見せようとすると、
「わかっています、ぜんぜん問題はありません」
と言いながら、まだ画面とにらめっこして、マウスを動かしている。
しばしのあいだ待っていた。
やっと
「いまはまだ部屋の用意ができていない。2時間ほど後に、来てくれませんか。」
と言う。
しかたがない。荷物を預けて、散策に出た。
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サン・セルナン聖堂の回りでは、衣料品のマルシェが開かれていた。
その脇を過ぎたあたりで、薄汚れた15、6の少年が、
ペンを貸してくれないか、と声をかけてくる。
ボールペンぐらいでむげに断ることもないと思い、貸してやった。
すると、もひとりのヒッチハイクの青年にそれを渡し、
青年は、紙切れに電話番号らしきものを書き、それをさきほどの少年に返し、
少年はそのペンをこちらに返してよこした。
少しゆくと、さっきの少年が、自転車で、
「メルシィ・ムッシュー」とこちらに声をかけながら、右手の家へ入って行った。
少し杞憂だった。
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ヴァラード通り沿いの社会科学大学、サン・ピエール教会、と歩いて、
橋の手前で、ほぼ引き返すようなかたちで、ロミギエール通りを、市庁舎前の広場まで来る。
その界隈で、お決まりのボルドーワイン、ビール、パン、りんご他の食料を調達して、
2時ごろ、宿に戻った。
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こちらの顔を見ると、さきほどのフロントの男は、滔々と釈明を始めた。
そんな、ことこまかに長々と、しかも早口で、説明をされても、
こちとらの生かじりのフランス語の能力を、はるかに超えている。
が、おぼろげながら、
要するに、メールでこちらが予約をした続き部屋 (suite) は、手違いで塞がってしまった、
それで別な部屋を用意したので、見てくれないか、ということだ、
と理解した。
相手の演説が終わるのを待ち、
「了解した、見せてもらいます。」
荷物はそのままにして男のあとに付いてゆく。
廊下が、カボチャやキュウリの蔓の枝別れのように、ジグザグになっている。
そのジグザグを、道なりに突き当たりまでゆき、そこの部屋を開けた。
まあ手ごろな広さの部屋で、そこにダブルベットとシングルベットが備えてある。
「ここが気に入らなければ、互いに離れてはいますが、別個の2部屋を用意することができます。
もしここでよろしければ、65 € にします(約束は 90 € )」
部屋は比較的せまいが、我々にすれば、これでじゅうぶん。
「ここで結構です。」
フロントに戻り、荷物を受け取り、カギをもらう。
男が、いそいそと荷物運び用の台車を持ってきたので、
「それは必要ありません」 |
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