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15-2.ナーポリのフニコラーレ、その他(2)
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路面電車があれば、それに乗って中央駅まで帰ろうとして、通りに出てみると、
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電停で何人かのひとが待っている。
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こちらも、一緒に並ぶ。
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ただし、目の前に線路はあるが、きのう以来、町中で、電車が走っているのを
いちども見かけていない。
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まもなく、オレンジ色(アランチャ色と言うべきか)のバスが2台続けてやって来て、
みんなそれに乗り始める。
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この色のバスが、市電の代行をしているようだ。
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待っていた人のひとりに聞くと、前のバスが FS(国鉄)の駅を通るとのことで、家内と娘が乗る。
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こちらが乗るときに、もう一人に念を押すと、
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「FS の駅には行かない」と言う。
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それで、乗るのをやめかけると、途端に、ドアが閉まる。
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あっと思って、閉まる直前に、すっと腕を入れた(蛇腹のドアで、縁にはゴムのクッションが
付いているから痛くはない)。
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ドアが再び開いて、連れのふたりが降りてきた。
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再度ドアが閉まり、バスは出た。
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後続のバスのドアが開く。
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運ちゃんに聞くと、「FS の駅へは行かない。前のバスが FS の駅行きだ。」
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乗るのをやめようとするも、「いいから乗れ!」と何度も言う。
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「次の停留所で、前のバスに乗り換えればよい。」なるほど。
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連れふたりのそばに座っていたオジサンも、ふたりに、そのことをしきりに説明してくれている。
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言われた通りに、次の停留所で、前のバスに乗り換えた。
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どうもバスは、よく右や左に曲がるので、よそ者には、すぐに、どの辺を走っているのか
わからなくなる。
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バスが、見たところ、FS の駅とおぼしきところに停車した。
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それで、つい降りたが、辺りの様子が少し違う。
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ナーポリ・チェントラーレではなく、チルクムヴェズヴィアーナという駅だった。
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そばにいたオジサンに中央駅の場所を聞く。
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「このすぐ先、もうバスに乗るまでもない。」
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通りの向かい側に市場が見えた。
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これ幸いと、そちらへ渡ろうとすると、
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そのオジサン、心配して、こちらを呼び止め、「方向が違う」と言う。
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「いや、そこの市場で果物を買いたい。」
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市場では、アランチャ、リンゴ、小振りの洋ナシを買い求めた。
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洋ナシは、固めなのに、完熟で、こういうのは初めて。うまかった。
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左端の魚の札に ORATE(クロダイ、単数は orata)と書いてあった。右の写真は、もろもろの貝。
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アシミールの『苦労なしのイタリア語』(ASSiMiL "l'italiano senza sforzo", 1991)に、
ナーポリのピッツァについて、
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"Se volete assagiare la pizza tradizionale, chiedete quella con aglio, origano e pomodolo."
(If you want to try the traditional pizza, ask for the one with garlic, origano, and tomatoes.)
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とあった。
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このナポリの伝統的なピッツァは、見た目は、いたって簡素なピッツァだが、
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食べてみると、この、たった三つの素材の味が、引き立って、とてもうまい。
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ピッツァの上に真っ赤に広がる完熟ポモドーロの味が、とりわけ良い。
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ほかの土地のトマトとは、たちが違う感じがする。
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ジーラナーポリの1日券(ジョルナリエーロ)は、2.32ユーロと、安かった。
300円ちょっとだ。
券の左下に、まだ、L.4500と、リーラの表示もあった。
大ざっぱに言えば、15リラで1円弱か。
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『リタリアーノ・センツァ・スフォルツォ』には、何度も、繰り返し、
ドゥエ・ミラ・リーレとか、クワットロ・ミラ・リーレとかが出て来た。
残念ながら(わかりやすくなったのはありがたいが)、
いまは消えてしまった、懐かしい単位である。
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ナーポリでは、何べんも何べんも道を聞いた。
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教えてもらって、礼を言うと、半分以上の人が、別れ際に手を差し出し、
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「アリヴェデルチ!」
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山の手では「ボン・ヴワヤージュ!」
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この二日間だけで、何べん握手をしたかわからない。
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ガリバルディ広場の北側から、カルボナーラ通りにかけて、
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その歩道上に品物を広げて商っているのは、多国籍人で、
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その一方、チルクムヴェズヴィアーナ駅の、ガリバルディ通りを挟んで、西側の市場に店を開いている人たちは、
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また、そこの路上に日用品や電気器具の中古部品を並べている人たちも、
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大半は地元のひとと見えた。
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