'03年・イタリア徘徊の巻
15-2.ナーポリのフニコラーレ、その他(2)
路面電車があれば、それに乗って中央駅まで帰ろうとして、通りに出てみると、
電停で何人かのひとが待っている。
こちらも、一緒に並ぶ。
ただし、目の前に線路はあるが、きのう以来、町中で、電車が走っているのを

いちども見かけていない。
まもなく、オレンジ色(アランチャ色と言うべきか)のバスが2台続けてやって来て、

みんなそれに乗り始める。
この色のバスが、市電の代行をしているようだ。
待っていた人のひとりに聞くと、前のバスが FS(国鉄)の駅を通るとのことで、家内と娘が乗る。
こちらが乗るときに、もう一人に念を押すと、
「FS の駅には行かない」と言う。
それで、乗るのをやめかけると、途端に、ドアが閉まる。
あっと思って、閉まる直前に、すっと腕を入れた(蛇腹のドアで、縁にはゴムのクッションが

付いているから痛くはない)。
ドアが再び開いて、連れのふたりが降りてきた。
再度ドアが閉まり、バスは出た。
後続のバスのドアが開く。
運ちゃんに聞くと、「FS の駅へは行かない。前のバスが FS の駅行きだ。」
乗るのをやめようとするも、「いいから乗れ!」と何度も言う。
「次の停留所で、前のバスに乗り換えればよい。」なるほど。
連れふたりのそばに座っていたオジサンも、ふたりに、そのことをしきりに説明してくれている。
言われた通りに、次の停留所で、前のバスに乗り換えた。
どうもバスは、よく右や左に曲がるので、よそ者には、すぐに、どの辺を走っているのか

わからなくなる。
バスが、見たところ、FS の駅とおぼしきところに停車した。
それで、つい降りたが、辺りの様子が少し違う。
ナーポリ・チェントラーレではなく、チルクムヴェズヴィアーナという駅だった。
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そばにいたオジサンに中央駅の場所を聞く。
「このすぐ先、もうバスに乗るまでもない。」
通りの向かい側に市場が見えた。
これ幸いと、そちらへ渡ろうとすると、
そのオジサン、心配して、こちらを呼び止め、「方向が違う」と言う。
「いや、そこの市場で果物を買いたい。」
市場では、アランチャ、リンゴ、小振りの洋ナシを買い求めた。
洋ナシは、固めなのに、完熟で、こういうのは初めて。うまかった。


左端の魚の札に ORATE(クロダイ、単数は orata)と書いてあった。右の写真は、もろもろの貝。
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アシミールの『苦労なしのイタリア語』(ASSiMiL "l'italiano senza sforzo", 1991)に、

ナーポリのピッツァについて、
"Se volete assagiare la pizza tradizionale, chiedete quella con aglio, origano e pomodolo."

(If you want to try the traditional pizza, ask for the one with garlic, origano, and tomatoes.)
とあった。
このナポリの伝統的なピッツァは、見た目は、いたって簡素なピッツァだが、
食べてみると、この、たった三つの素材の味が、引き立って、とてもうまい。
ピッツァの上に真っ赤に広がる完熟ポモドーロの味が、とりわけ良い。
ほかの土地のトマトとは、たちが違う感じがする。
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ジーラナーポリの1日券(ジョルナリエーロ)は、2.32ユーロと、安かった。

300円ちょっとだ。

券の左下に、まだ、L.4500と、リーラの表示もあった。

大ざっぱに言えば、15リラで1円弱か。
『リタリアーノ・センツァ・スフォルツォ』には、何度も、繰り返し、

ドゥエ・ミラ・リーレとか、クワットロ・ミラ・リーレとかが出て来た。

残念ながら(わかりやすくなったのはありがたいが)、

いまは消えてしまった、懐かしい単位である。
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ナーポリでは、何べんも何べんも道を聞いた。
教えてもらって、礼を言うと、半分以上の人が、別れ際に手を差し出し、
「アリヴェデルチ!」
山の手では「ボン・ヴワヤージュ!」
この二日間だけで、何べん握手をしたかわからない。
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ガリバルディ広場の北側から、カルボナーラ通りにかけて、
その歩道上に品物を広げて商っているのは、多国籍人で、
その一方、チルクムヴェズヴィアーナ駅の、ガリバルディ通りを挟んで、西側の市場に店を開いている人たちは、
また、そこの路上に日用品や電気器具の中古部品を並べている人たちも、
大半は地元のひとと見えた。
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