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15-1.ナーポリのフニコラーレ、その他(1)
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ここのホテルのビュッフェは7時から開いていた。
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朝食は完全に、コーヒィも、セルフサーヴィスだった。
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自分で勝手にカッフェラッテなどにするわけだが、味は悪くない。
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ときには、天然のジュースではない、気の抜けた味のジュースを出すホテルもあった。
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幸い、ここのは、アランチャのジュースもおいしかった。
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パンの種類は、コルネッティ(クロワッサン)のみだった。
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それでもいいのだが、カスタード入りなので、甘い。
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朝に、甘いパンでは、すなおに受け入れがたい。
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いささか行儀が悪いが、中身は取り除けた。
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珍しく、少し塩気のあるプロシュット・コット(調理ハム)が付いていた。
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朝食を早めに取れたので、8時には外出した。
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ガルバルディ広場の真ん中より少し駅寄りのところに、切符売場らしきプレハブ様の建物が見えた。
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そこの窓口で、 Biglietti Giranapoli(ナーポリ周遊券、というところか)を買えるかどうかを
聞くと、買えるという。
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切符を買ってから、使い方を聞くと、
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「地下鉄、ケーブルカー、バスなどに、一回、検札器に入れる」
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と言う。
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「1日のあいだ、何回でも、乗り降りができる、と思うのだが?」
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「そうだ。」
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なんだか、少しわからないところがあるが、ともかく、かまわず使ってみることにする。
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Mのマークが見えたので、その階段を降り、改札で聞くと、そこの検札器に入れろ、と言う。
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が、入れても、ぜんぜん反応しない。
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ひょいと隣の人のを見たら、切符を裏返しにして、入れている。
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こちらも真似をし、同じようにして、入れたら、反応し、印字された。
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リーネア2の4番線のホームを降りてゆきつつ脇を見ると、ホームが、他に何本も見える。
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念のために、また戻って、駅員に確かめた。
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「ビナーリオ4、モンテサント駅は二つ目」
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と教えてくれた。
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乗客はまばらだった。
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車体および車内は、(ナーポリにしては?)こぎれいだった。
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モンテサント駅で降りると、降り口には係の人がいなかったので、ぐるっと回り、
乗り口のところで、ケーブルカー(フニコラーレ)の乗り場を聞く。
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地下鉄駅の前のちっぽけな広場の左手の細い道を指差して、
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「そこを真直ぐに行って、右」
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フニコラーレ・モンテサントの駅で、次のケーブルカーの発車時間を聞く。
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「8時15分前」
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あと、10分ほどある。
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教えられて、こんどはチケットを表にして改札口の器械に入れる。
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目の前の大きなガラス戸は閉まっている。
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「少し待ってくれ。時間になったら開ける。」
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途中に、二つほど駅があった。
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ナポリのフニコラーレは、とくに観光のためのものではなく、
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市電のような感覚で、日常的に利用する交通機関と見た。
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駅前で、この駅に関係する人たちだろうか、三人が語らっている。
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声をかけて、僧院への道を聞く。
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すると右手の、人は通れるが、車は入れないように、ウマを設けてあるのところを指して、
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「そこを入って、まっすぐに行って、右に曲がれ」というようなことを言う。
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そこを入ると、その先は、たしかに道になっている。掃除のオジサンに声をかけると、
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「サン・マルティーノは、奥まで行ってから右」と教えてくれた。
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辺りの様子は、下の町とは大違いで、落ち着いた山の手の(高級)住宅街、という雰囲気である。
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歩いてゆくと、通りの左側の、建物群の隙間を通して、下方にナポリの(下)町が
広がっているのが垣間見える。
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まもなく右手に大きな城(Castel Sant'Elmo)が現れた。
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城の上部の切り口に人影が見える。
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見晴しがよさそうなので、入ってみることにした。
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チケット売場には、客は、他には中年の夫婦のみ。
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少しあとに、若い女がひとり入ってきた。
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中年夫婦の夫の方が、こちらを見て、
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「50ユーロを小銭にかえてもらえまいか?」
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「残念ながら、細かくできない。」
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こちらは、ひとり3ユーロなので、3人分として、売り場のおネエちゃんに
10ユーロ紙幣を出すと、
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1ユーロ分の釣りを、小銭を掻き集めて、よこした。
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そして、中年夫婦には、
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「ちょっと待ってください。用意してきます。」
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ラシェンソーレで上へ上がると、眺めはまことに広々として、素晴らしかった。
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東にはヴェズーヴィオが、朝靄のなかのナーポリの町のかなたに、雄大に浮かび上がっている。
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南東に広がるナーポリの港の景色も、じつに趣きがある。
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サンタ・ルチーアからメルジェルリーナにかけての海岸線も悪くない。
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要するに、高台から海を眺めるのは、気持ちのよいものである。
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しばし、あちこちを見渡して、ときを過ごした。
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これで、満ち足りたので、チェルトーザ(修道院)・サン・マルティーノに入るのは省略。
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さきほどの駅へ戻る途中、すれ違った背の高い中年の男に
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「日本ノ、ドコカラ来マシタカ?」
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と、声をかけられる。
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「私はカメオのファクトリィを持っている。キョウトのダイマルでも展示しました。 |
ナーポリは、下の街とこの辺りとでは、ぜんぜん環境が違う。下はディンジャラスだ。 |
私のファクトリィに寄ってゆかないか?」
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「他に、見るところがあるから」と断り、別れる。
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駅では、オジさん方三人、まだ話が弾んでいた。
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ここから程近いところにあるはずの、もうひとつのケーブルカー、
「フニコラーレ・チェントラーレ」の駅の場所を聞く。
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「この道をまっすぐに行くと、石段が2箇所ある。それを降りると、
ヴァンヴィテルリ広場に出る。その広場を左に行けばよい。」
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広場に出るひとつ前の交差点の角の歩道上で、オバさん二人が話し込んでいる。
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手元の地図の上では、少し近道できそうに思えたので、
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「邪魔をして申し訳ない。」
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「オー・ニエンテ!」
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やはり、ここで左に曲がってゆくと、駅へ出るとのことだった。
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フニコラーレ・チェントラーレで、下に降りる。
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電車は、3両編成で、ケーブルにぶら下がっているタイプではない(はずだ)が、 |
途中の駅で停車すると、停車している間中、ゆるやかに前後に揺れていた。
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中央上部に見える線(F)が Funicolare di Montesanto。
左の中ほどから右下へ斜めに走っている線(F)が、Funicolare Centorare。
左上隅(水色)が、山の手の住宅街。 右上(黄色)は、ナーポリの下町(旧市内)の左端。
右下隅(緑色)に、Teatro S.Carlo と Castel Nuovo。
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from: Estate a Napoli 2003
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下の駅を出ると、右手の角に惣菜やがあった。
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入ると、店員(男)が、「何を望みか」と聞いてきた。
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店員を待たせて、品定めに、少し手間取ってから、三種類の品を選び、あげくに、
僅かの量づつ注文し始めたら、
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その店員の反応が、煩わしくなったのだろうか、鈍くなった。 |
そして、他の客に目を移し、そちらの応対をし始めた。
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こちらの注文を(一応は)受けているはずなのに、少し待っても、品物をよこす気配がない。
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こういう店も、ときにはある。
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買うのは止めにして、店を出る。
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ヌオーヴォ城とサン・カルロ劇場との間に、車を進入禁止にした広い道があり、
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そこを行くと、何かコンクリート製の大きなゲートのようなものの、ちょうどいい具合に、
日陰になった場所に、座り心地のよさそうなベンチが置いてあった。 |
そこで休んでいると、気持ちのよい浜風が通る。
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左手に水桶、右手にバケツ(どちらにも水が入っている)を持ったオジイサンが来た。
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かなり重そうだ。
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我々の前で、水桶とバケツを置いて、一息つく。
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水桶に手を突っ込むと、タイのような魚を取り出して、見せてくれた。 |
あとで市場で同じ種類の魚を見た。「オラータ(クロダイか?)」とあった。
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魚は、掴まれたまま、尻尾を跳ねさせている。
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家へ帰ったら、料理して食べる、というようなことを言って、
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炎天下、ふたたび両手にぶら下げて、ゆっくりゆっくり歩いていった。
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