'03年・イタリア徘徊の巻
2.まずはサン・ピエートロ広場へ
テレビの朝7時の天気予報では、ローマの最高気温は38℃と出ている。
朝食は、パン、シーリアル、チーズ、ハム、ジャムとまずは豊富にある。
とりわけコーヒーとジュースがうまい、というのがイタリアでの朝食の第一印象。
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朝8時半前に、宿を出て、テルミニ駅方面へ向かう。
駅前の地下鉄テルミニ駅の手前の新聞販売店で切符(一回券)を買う。
地下鉄A線(リーネア・ア)に乗り、オッタヴィアーノ駅で下車し、ヴァティカーノへと向かう。
サン・ピエートロ広場に入ると、大聖堂(バジーリカ)の入口手前で、三度ほど検問があった。
ノースリーヴのご婦人方は、注意をされる。
しかし、なにしろ、あまりに暑いので、注意されたときだけ、

スカーフなどで肩を被う、というか、かたちだけ、被うような仕草をするだけ。
ドーム(クーポラ)に登るのは、エレベーターを使わず、歩き(ア・ピエーディ)にした。
その方が、身体にこたえるが、高さを実感できる。
祭壇の上方の、天蓋のきわまで上がるのでさえ、かなりの段数である。
さらに、そこからクーポラの上部までは、その外観からすれば、当然そうあって然るべきなのだ
が、どうなっているのかを、このとき経験するまで知らなかった。
ドームの部分の螺旋階段は、その幅が徐々に狭くなり、そのうえ、脇の壁が斜めに迫ってくる。
自分の身体もそれに合わせて、内側に曲げないと、頭が壁にぶつかる。
大汗をかき、やっとの思いで、登り切ったが、
上(120メートル)からの眺めは、さすがに素晴らしい。
The city map above: Citta del Vaticano
from "Baedekers Allianz-Reiseführer, Rom." Karl Baedeker GmbH 1988, pp.134-135
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サン・ピエートロの出口に若い係官がいた。
この暑さのさ中、黒っぽい背広にネクタイを締めている。
「ローマの夏は、いつもこんなに暑いのか。35度はあるね」
「いや、これは特別だ」
広場から真東に向かった。
コンチリアツィオーネ通りを歩いて、テーヴェレ川のほとりに出、
サンタンジェロ城を巻くように川べりを歩くと、

城内に、高い松の木の陰になるようにベンチが置いてある。
休んでいる人がちらほら見える。
夏は雨が少ないのだろう、下草が生えていない。
車の音は聞こえず、静かで、気持ちがよさそうな場所だった。
こちらも、ここでひと休みにする。
日なたは、とても立っていられないほどの暑さだが、日陰にいると、爽やかだ。
ビールと機内で貰ったワインの残りを飲みながら、パンをかじり、小1時間ほど休んだ。
「パンとぶどう酒」はよく合う。
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ひと休み後、ウベルト・プリーモ橋を渡り、ナヴォーナ広場(ピアッツァ・ナヴォーナ)を眺め、
さらに東へ歩いて、パンテオン、そしてミネルヴァ教会も、ちょっと覗いてみる。
そのあと、トゥレーヴィの泉の方角へ行こうとして、歩き出したが、
歩き出してまもなく、連れが、右手のスーパー(スーペル・メルカート)の看板に気が付いた。
わき見をせずに歩いていたら、気が付きそうにないほどに、間口は狭い。
しかし、奥行きはだいぶん深くて、そして広い。
品数も豊富にあった。
これさいわいと、サラーメ(サラミソーセージ)、青リンゴ、ポモドーロ(トマト)、

アランチャ、ヴィーノ(ワイン)、1リットル入りの缶ビールを2本、その他、を買い込んだ。
しかし、十分に食料を仕入れたら、重たい。そして、外は暑い。
今日はもう満足なので、宿に引き揚げることにした。
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ところが、このスーパーに入るときにはもうすでに、すっかり勘違いをした。
西向きのミネルヴァ教会の場所を、何を思ったか、

その隣の向きが90度も違う、北向きのサンティニャーツィオ教会と、取り違えてしまっていた。
それで、手元の地図を見ながら、自分では、まずは東に向かうつもりで、

方向違いの、南に下ってしまった。
そのため、辺りの様子が、当然のことながら、地図と合わなくなってきた。
やや広い通りに出てから、辺りを見回し、

女性連れの、バイク乗りの兄チャンを見つけ、聞いてみた。
すると、この場所はピアッツァ・ヴェネーツィアの近くであること、
最寄りの地下鉄駅はコロッセオだという。
これには狼狽した。
「カピート、グラーツィエ」とは言ったものの、まだぜんぜん、頭の中の地図の整理が付かない。
「バルベニーニ駅へゆくつもりだったが、コロッセオに近いというのでは、止むを得ない。

コロッセオに向かうとしよう」
と考えて、勝手に、兄チャンが指差した方向(東)を無視して、西に向かい、
すぐに、今度は、信号待ちの中年の男にも尋ねてみた。
すると、やはり、この少し先(東方向)の広場を右手に向かうと、

コロッセオに通じるフォーリ・イムペリアーリ通りに出る、とのことだった。
頭の回転の鈍い小生も、この時点で、ようやく、わが過ちを悟った。
ヴィットーリオ・エマヌエーレ・セコンドのための記念建造物の前の広場に出て、
そこの広い石段の前で警戒中の警官のひとりにも、石橋を叩いて渡るがごとくに、聞いて、

確認した。
「向うに見える通りを右に行くとイムペリアーリ通り、それをまっすぐに行くとコロッセオ、

その手前、左手に地下鉄の駅がある。歩いて5分だ。」
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今朝、地下鉄オッターヴィオ駅の出口で、切符の窓口が目に入った。
誰も並んでいなかったので、次回用に、一回券を購入した。
が、大きさも図案も、テルミニの新聞売店で買ったものとは違う。
「この切符は明日でも使えるか」
「使える」
この切符を、コロッセオの駅で、検札機に入れようとするが、中に入らない。
脇にいた駅員に聞くと、
「これは新しい切符だから、新しいマッキーナに入れなければならない」
と、以前から備え付けの検札機の、その上に乗っけた、小さめの機械のに挿入してみせる。
前からの機械は、切符を差し込み、ジジーと音がして印字されてから、自分で引き抜くのだが、
新しい方のは、キャッシュカードなどの場合のように、

切符を呑み込んでから、日付けを印字して、また出てくる仕組みで、
見ていると、他の人もけっこうまごついていた。
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今日はだいぶ歩いたので、少し労を減らそうと、テルミニでは降りずに、

ホテルの近くのカストロ・プレトーリオ駅まで行って、降りた。
ところが、このすぐ近くのはずなのに、地上に出たら、またもや行くべき方向が分からない。
身だしなみの良さそうな初老の男性に聞くと、目の前の横断歩道の先へ続く道を指して、
「この通りを行けばよい」
もういっぺん、坊主頭の太めのアンチャンに聞く。
答えあぐねている風だったが、そのとき、宿のすぐそばまで来ていたことに、はたと気付いた。
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パンやチーズを買おうとして、朝に目星をつけていた店に行くと、
午後の休み時間中で、閉じていた。
も少し手前のピッツァ店が、開いていた。
二種類のピッツァを一個ずつ注文し、持ち帰りたいと言ったら、

大きくて平べったいボール紙の箱に入れてくれた。
わざわざ誂えてくれたのかと、このときは思ったが、

これは特別なものではなく、ピッツァ用に、普通にどこででも使っていた。
ホテルのフロントには、昨日のシニョリーナがいたので、もういちど礼を言っておく。
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