'02年・イギリス瞥見の巻
1.Arrival in London
 機内で赤ワインをもらう。
 メイド・イン・フランスの安物(?)だが、味は、渋くて、まずまず飲めた。
 缶ビールも、two cans of beer(などと言う、とスチュワーデスに教えられた)をもらった。
 アルコールのおかげで、ロンドンに着くまで、身体をじゅうぶんリラックスさせることができた。
 入国審査のとき、UKの連中の列とEUの列は短くスムーズに通り抜けている。
 その他の国の乗客は、審査を受けるのに、長蛇の列で、番が回って来るまでの間、ゆうに30分は待たされた。
 このときは、これは差別だ、と思った。
 が、帰りに、日本への入国の際には、我々の手続きはえらく簡単で、外国人の方は手間ひまがかかっていたから、まあ、おあいこだ。
「何をしに来たのか」「どれぐらい滞在するつもりか」「その後に日本へ帰るのなら、帰りのティケットを見せてくれ」と言われて、
wait a moment」と断って、もうカバンの奥底にしまいこんでいた帰りの航空券を、手間取ってやっと取り出す。
〜〜〜〜
 ヒースロウ・エクスプレスの方向を、とちゅう何度かひとに聞きながら、地下通路をかなり歩いて、リフトで、さらに地下へと降りた。
 乗車券発売と思えるカウンタが目に入った。
 そこで切符を購入し、はじめてイギリスのコイン、£1硬貨、を手にした。
 日本の100円玉と同じ大きさだが、厚さは倍もある。
 はじめてだと、こんな些細なことにまで興味が引かれる。
 たった15分でパディントン駅に到着した。
 エクスプレスの窓から見えた途中のロンドン郊外の家並みは、アシミールの『苦労なしの英語』 ("l'anglais sans peine" 1976)
「郊外の家々はまったく同じである」"because they belong to the same proprietor, and were built together, on the same plan."
 といったような 表現があったが、まさにその通りだと思えた。
〜〜〜〜
 パディントン駅で ブリットレイル・パスのことを聞いた。
「右手のアドヴァンス何とかのところへ行け」
 ゆくと Tickets Advance Travel という窓口があり、そこの列に並ぶ。
 10分後、認可スタンプ (Validating Stamp) を押してもらう。
 その窓口で、ついでに、地下鉄用の7日間有効のパス (Travelcard 7 Days) はどこで手に入れるのかを聞くと、こんどは、
「左手の階段を降りて行け」
「地下か?」
「そうだ」
 降りて、少し歩くと、Hotel Information があり、その先、地下鉄の改札口の手前に、それとおぼしき Assistance & Tickets とある、窓口があった。
 尋ねると、
「写真が必要だ」
「それは持っている」
「パスポートを見せてくれ」
 というわけで、これも何とか購入できた。
 が、なぜにあちらこちらに別個な窓口が散在しているのか。
 その向かいに、本の売店が見えたので、
「列車の時刻表で "ABC Railguide" というものはあるか?」
「ここにはない、ヴィクトーリア駅に行ってみたら、どうか。」
〜〜〜〜
 パディントン駅から、宿の方向の見当を付けながら、歩き出す。
 地図の上では1.5km 弱の距離である。
 途中、イギリス紳士風な人を見かけたので、道の確認をする。
 丁寧に答えてくれた。
 しばらく行ってから、こんどはアフリカ系の地元の人に、
 目の前の通りが、横切る予定のエッジウェア・ロウド (Edgware Rd.) という名の通りかどうかを聞く。
「そうだ、どこへ行きたいのか」
「マーブル・アーチの方向だ」とおおざっぱに答えたら、
「それなら、この通り (Edgware Rd.) を右へ行くべきだ」
「いや、じつはマーブル・アーチの北、2本目の通りを行きたい」
 すると、こちらが斜めに横切ろうとしている道を指し示して、
「それならこの道でよい」
 気さくで陽気なひとだった。

The city map above: from "Baedekers Allianz-Reiseführer, London.", Karl Baedeker GmbH 1988
 かれこれ20分ぐらい歩いただろうか。
 やっと今夜の宿に辿り着く。
〜〜〜〜
 部屋のカギが2個、玄関のカギ1個、合計3個のキィの束を渡される。
 階は4階 (3rd floor)
 リフトはなし。
 トイレは部屋の外の廊下 (corridor) の突き当たり。
 ただ廊下と言っても、じゅうたん敷きで、幅は半間ぐらい。
 途中にちょっとした段があり、ガラスの仕切りドア (Fire door) がついている。
 部屋にシャワーは付いているので、さっそく浴びようとするも、湯が出ない。
 気温が22、3度なので、水を浴びる気にはなれない。
 からだを拭くだけでがまんをする。
 フロントにひとこと言おうと思ったが、明日は部屋を替える(同じホテル内で)ことになったので、移り先の部屋の様子をみてからにする。
 今夜の部屋の広さは14畳ぐらいか。
 けっこう通りの車の音が聞こえていたが、夜半には静かになった。
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