'01年・ドイツ再訪の巻
14.ケルンで ― 銀行と宿
 昨夜は暑かった。
 7時にチェックアウトする。
 駅で昼食を仕入れ、ハンブルク中央駅7時47分発の EC 109(ユーロ・シティ)に乗る。
 禁煙車輛は混んでいたので、喫煙車輛の方へ移る。
 幸い、テーブル付きの席が空いていた。
 今日はケルンまで約4時間の旅なので、楽をしたい。
 3人掛け向かい合わせのコンパートメントを、今回の旅では、はじめて見た。
 あいにく予約席ゆえ座れなかった。
 検札に来た車掌が、
 「日本から来たのか? 最近テレビで日本のことを放送していた。」
 次に回ってきたときには、
 「ここではタバコを吸ってもいんですよ。」
 「私はタバコを吸わない。」
 男にしては、愛想のよい車掌だった。
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 隣のお婆さん、学校関係の人だろうか。
 ちょっと覗いたら、簡易装釘の論文集らしきものに読み耽っている。
 靴を脱いで、前に置いたトランクの上に、ちょこんと足を乗っけている。
 小生も、この日までは憚って控えていたのだが、真似をしてみた。
 たいへん楽だった。
 ただ、毎日さんざん歩いて酷使した脚の筋肉を、急に変な具合に緩めたせいか、
 あとで、ケルン市内を歩くとき、ふくらはぎが攣ってしまい、えらく閉口した。
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 EC 109 はハンブルクを出てから、ほぼ南西の方向を目指して走り続け、エッセンを過ぎて、デュースブルクの辺りでライン川に近付く。
 このあと、列車は、ライン川の東側(右岸)を30分余り、上流へ向って南下するが、
ラインの西岸(左岸)の大都市ケルンに入るために、大きく右に迂回して、
ライン川を真東から真西へ横切るように、(下の写真の右から左へ)ホーエンツォラーン橋を渡り、
そのあと、さらに右に曲がりつつ、北北東の向きで、ケルン中央駅のホームに入った。
 こちらは、ケルンで降りたが、
EC 109 は、このあと、こんどは左に大きく弧を描いて、左岸をフランクフルト方面へ南下する。
 どうもケルンの位置は、列車で旅行しているせいか、地図でよく確認をしないと、錯覚を起こす。
上の写真: ホーエンツォレン橋(Hohenzollernbrücke) 01.08.20
左(西)の袂の西南にケルンのアルテ・シュタット(旧市街)が広がる
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 ホテルの方角は、だいたいわかっていたが、細い小路が入り組んでいる場所のはずなので、
土地のひとに、教わりながら、ぶらぶらと歩いていった。
 ザルツガッセというから、塩小路とか塩横町というところか。
 この横町名を言えば、地元の人はすぐわかるようだ。
 ホテルは、予想どおり、狭い石畳みの細い通りに面した、こじんまりとしたものだった。
 「部屋は二階の104号室と103号室。これがそのカギ。」とカギを二つ渡された。
 「三人用の部屋を頼んだのだが。」
 「わかっている。104号室と103号室はセット(スウィート)になっている。」と言う。
 言われた通り、2階に上がって、左(西)に折れ、104 とあるドアを開けると、鉤(『 )型の廊下になっていて、
手前右手(北)に、洗面所兼シャワー室のドア、突き当たり(西)が104号(ダブル)の部屋、右手奥に103号(シングル)の部屋という構成になっていた。
 103号室も、椅子やテーブルが備えてあって、まずまずの広さだが、104号室は、ベッドの脇に本革張りの大形のソファー・セットがゆうゆうと配置されているほどに広い。
 西側の壁一面は、作り付けの戸棚になっていて、骨董品的なワイン・グラスや銀や錫の食器が並べてあったが、
これは壊したり傷つけたりするのを怖れ、使用するのを遠慮した。
 荷物を置くと、例のごとく空身になって、町へ繰り出した。
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 ドイツの町を歩くと、デパートでは、カウフホーフとカルシュタットというのがよく目につくが、その中身には少し差があるようだ。
 ケルンにも、繁華街ホーエ・シュトラーセの南端近くにデパートKがあったが、内容はいまひとつ、だった。
 連れが、ホーエ・シュトラーセの途中から西へ折れるブリュッケンシュトラーセの、その先のグロッケンガッセの「4711」へ行きたい、と言う。
 そこにある店で eau de Cologne を買いたいのだ、というので、付き合った。
 店で待っているあいだ、この界隈に大手の銀行とか、デパートとかはあるかどうかを、店のひとに聞いてみた。
 両方とも、近くにある、という話で、道順を教えてもらった。
 まず、ドイッチェ・バンクの方へ行こうとしたが、どうも場所と方向が少しあやふやになったので、
ふと目にとまった婦人警官にあたってみた。
 駐車違反の車のチェックを終え、この暑さのなか、完璧な身支度で、バイクに乗ろうとしていたところだったが、
丁寧に、かつ てきぱきと教えてくれた。
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 ドイッチェ・バンクで:
 「ここでトラヴェラーズ・チェックを現金化できるか?」
 「ヤー、が、手数料がかかる。ドーム(大聖堂)の近くに、無料で換えられる○○がある。」
 「この近くのホテルに住んでいる(そう近いわけではなかったが、方便で)。ドームまでは遠い。」
 「2分で行ける。」(実際には、15分はかかる。)
 「手数料は、(つい日本円を思い浮かべ)1000 . . . 。」
 すると、大袈裟な身振りで、「1000マルクなんて、とんでもない。」
 「10DMか?」
 「残念ながら20だ。」
 (20DMの手数料では高めだが、)「それで構わないから換えてくれ。」
 「承知した。」
 それで、こちらは 600マルク分の TC にサインをした。
 むこうは、サインをざっと確認してから、
100マルク紙幣、ついで10マルク紙幣を、580マルクまで数えながら、置き、
最後に何とか言って、5DM 硬貨をポンと紙幣の上に乗せてよこした。
 おまけというところか、と思ったので、礼を言って受け取った。
 これまでの銀行は(ほとんどドイッチェ・バンクだった)どこも、何かあれこれ細かな記入をしていたが、
ここのドイッチェ・バンクではそんなこともせず、TC の上にゴム判をペタペタ押しておしまいだった。
 ついで入った、4711 で教えられた、別なデパートKは、
品物が豊富で、質もよく、かつ店員の応対もよい、品位のある店であった。
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