'07年・オーストリア縦断
06-1.<< 8/11(土) 北上し、リンツへ >>
けさの食堂は、ざわついていた。何十人というグループの喧噪な団体客が、テーブルを占拠し、

皿を持って、せわしげに行き来している。食べ物を選ぶときも、手の動きがすばやい。

こちらは、皿の上のものが飛ばされないかとヒヤヒヤした。落ち着いて食べらていられない。

外は雨。

7時40分、支払いを済ませて、宿を後にする。
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グラーツ始発でインスブルック行きのインターシティ(IC512)はすでにホームに入っている。

発車真際に番線を発表するイギリスとは大違い。この点はとても楽だ。

席に付いてまもなく、肩をトンと叩かれる。振り向くと、おばあさんが

「ドアを開けてくれないか、送って来てくれた人が出られない」

デッキの上部の取っ手を左へグイと引くと、大きなドアが開いた。

「あなたはとても親切だ。親方(マイスター)どうもありがとう」

「マイスター」と呼ばれたのは、初めてだ。

車掌が検札に来た。

この列車の運行表(折り畳んだパンフレット、発車前に車掌がボックス毎に置いてゆく)には、

ゼルツタール駅での乗り換えが「Gleis 1a」から「Gleis 11」となっていたので、

そのことを聞いてみた
「乗り換え時間はたった6分だが、

移動の距離は遠いのか」

すると、笑いながら「すぐ隣りだ」

まさしくそのとおり、

同じホームの隣りの番線だった。

「11番線」とは、

日本なら0番線というところか。

だいいち、この乗り換え駅は、

ホームが2本(だったか)の、

静かな田舎の駅だった。
何にしろ、ヴィーンからグラーツのときの乗り換えも、

今回のグラーツからリンツへの乗り換えも、待ち時間がほとんどなく、とてもスムーズだ。

「連邦鉄道」は、じつによく機能している。

列車の窓から眺めていると、家々の脇に、

マキがきちんと、そして山のように積まれているのが、目につく。薪ストーブ用と見える。
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リンツ駅の「インフォメーション」で、

「できれば、ドイツの国境の町パッサウへ行きたいと思うのだが、

オーストリア用のレイルパスは、いったい使えるものかどうか」と聞くと、

「使える」とのことであった。これは幸い。パッサウは、かつて行きそびれた町だ。

宿は、駅前の道を一本入ったところで、多少もたくたするが、まもなく見つかる。

家族経営とおぼしき、小じんまりとしたホテルだった。

受け付けのひとは、ここの「娘さん」か。リンツの市街地図をくれる。そして

「このホテルを出て、通りを左へ、それから北へ上ればよい」と教えてくれたが、

こちらは、あまりよく理解できない。

ともかく、まず部屋に荷物を置く。造りは古風で、落ち着いた感じがする。

近くのスーパーを覗いて、レジのおばさんに、明日の日曜は「休み」のことを確かめ

「あとから買いに来る」と言い置いて、町へ繰り出した。

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ガイドブックからコピィした地図で、見当をつけようとしたのだが、

どうも方向がわからない。

ともかく、適当にというか、ほとんどやみくもに歩き出し、

ひとを見かけたら「街の中心への方向」を聞き、教えられた方へと向かう。

けっこうな雨が降り続いていて、

インクジェットのプリンターでカラー印刷した地図は滲んで、判読しずらくなってきた。

歩いている人も少ない。
そのうち、やっと大通り(電車通り)に出た。ここは人出が多い。

通りの雰囲気もなかなかよい。

モーツァルトの「リンツ」(交響曲36番)のイメージどおりの街だ。

川(ドーナウ)を見て、ドームを眺め、また大通りに戻る。

「デパ地下」でオーストリア・ワインを

(今日はまともな値段のものを)購入する。

幸い、雨も小降りになり、降ったり止んだりの天気になってきた。

市民ガルテンの手前の道を右に曲がり、

(地図で確認をしながら)菱形の交差点から南西の道へ入り、

ベートヴェン・シュトラーセを左に下って、次の角を右に折れ、

そしてホテルが見つかる。

ガイドブックの位置表示が少しずれている(そういうことはままある)。

フロントには、こんどは、親父さんがいた。

aus:
Baedekers Reiseführer,Österreich;
Karl Baedeker GmbH,
Ostfildern-Kemnat bei Stuttgart, 1988
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