'04年・フランス漫歩の巻
13.トゥルーズからボルドーへ
朝8時半、宿を出て、

そのままゆくと駅の左側に出る通りを、まっすぐに進み、

駅の方へと右折するその手前のところまで来ると、

路上に停めてある(街中ではこれが普通だが)ある車のボンネットに、

毛布を、雑に丸めて、載っけてあるのが、チラッと目に入った。

そのまま何気なく通り過ぎようとして、何となくもういちど見た。

人間だった。

ふさふさの毛皮で身を包んだおコモさんが、

ボンネットの上で、身体を丸めて眠っていた。

この女のひとは、きのう、カルカッソンヌからの帰りに、

この近く、もう少し駅寄りのところで見かけていた。

この暑いさ中、この同じ毛皮のコートを着て、トボトボと歩いていた。
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9時24分発のTGV

通路を挟んで我々の向いのボックスが空いていた。

そこに、発車の5分前、

2、3歳の男の子を連れたやや若い夫婦が、そそくさと、やってきて、席を占めた。

発車してしばしの後、車掌が検札に回ってくると、

1等がどうのこうの、と言って座席券(2等)を購入していた。

TGVは全車指定なので、座席指定券なしでは乗車できないはずなのだが、

1等の席を予約して乗り、空いていたので、2等に代えてもらったのか? 

あいにく、車掌が、追加の額を要求したのか、

あるいは、余分な金を返したのか、見ていなかった。

まあ、他人の穿鑿をしても始まらない。

それはともかく、この父親がたいへんなおしゃべりで、

ボルドーの駅に着くまで、延々と、

主に、これからの自分たちの住居の話を、

間取りがどうの、寝室の数、浴室がどうの、居間がどうの、

ガレージをどうするか、テラスはどうだ? と、

奥さんを相手に、説明を続けていた。

奥さんの方は、静かな声で、少し相づちを打つぐらいである。

これまで乗った列車の内は、ほとんど静寂そのものであったが、

ときに今日みたいに、居眠りをさせてもらえないこともある。
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ボルドーの駅舎は、ワイン貿易で栄えた町らしく、

南北にかなり長い、堂々たる建物である。

今日のホテルは、この駅舎の北端の斜向かい、角地に建っていた。

4階の304号室。部屋から駅が見える。
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ほぼ西に向かって伸びている駅前通りをゆくと、左に工業高校 (Lycée Tech.)

ヴィクトワール広場からは北へ向かう。この辺りから商店街になる。

少しゆくと、フランスに来て初めて、大規模なスーペルマルシェに出くわした。

乾燥ソシソンもたくさん種類があった。

ワインも産地別に、ピンからキリまで、

売場のふたコーナーを占めて、種類が山ほど並べてあった。
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夜半に雷鳴があり、屋根を叩く雨の音。
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