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08.マルセイユ
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朝の5時、まだ外は真っ暗だが、
この時間に、大型のゴミ収集車が街を回っている。
他の都市も繁華街はそんな風だった。
そして撒水車が通ってゆく。
そのあと、窓から眺めると、車道にきれいに水打ちがしてあった。
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8時前に外出する。
バジリク・ノートゥル=ダム・デゥ・ラ・ガルドゥを目指したいのだが、
いかんせん、詳しい道路地図が手元にないので、道順がよくわからない。
まずローム(ローマ)通り(Rue de Rome) を南下した。
県庁のところあたりで曲がれば、だいたいその方角に向かうだろう、と算段した。
ところが、(よく、しでかすのだが)何を勘違いしたのか、東へ向かおうとしていた。
ちょっと気になって、通りがかりのオバサンに聞いたら、県庁の脇を西へ行けとのこと。
さらに、途中で3、4度、道を聞いた。
2度目にプレフェクテュール(県庁)を過ぎたあたりで、中年過ぎのオジサン二人連れに聞いたが、
このときの説明はとてもわかりやすかった。
この県庁脇の道を右寄りに西進して、
コルデリ広場に出たら、そこを左へ曲がればよい、というもの。
広場の手前で、中年のオバサンにもう一度聞く。
そこを左へ曲がり、あとは「延々と」登って行きますよ、という表現だった。
じっさい、けっこう急な坂の、直線の歩道が、山手へ向かって続く。
両脇には、建物が立ち並び、車道の端には、斜め駐車のクルマの列。
大いに汗をかいた。
寺院は思ったよりも大きい。
見晴しはとてもよかった。
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この山の上から見当をつけ、サン・ヴィクトール寺院を目指して、降りる。
その手前で店を見つけ、タルトとピッツァを買う。
寺院の周りは、二人組の警官がふた組、通りの手前と奥とで、警戒している。
喪服姿のひとが、寺院の入口のところで、記帳をして、中へ入ってゆく。
これから葬儀が始まる気配なので、入るのは遠慮する。
先へ進み、ニコラ要塞への入口の坂を上がってみる。
が、鉄の門は閉ざされていた。
現在は、修復のための工事をしているようだ。
ファロ公園まで歩く。
まだ、時間は10時半だが、お昼にする。
ここからは旧港に出入りする船がよく見える。
この先は外洋になるので、
港から来た船は、ここでエンジンを全開にし、ヨットは、帆を張る。
トマト味のピッツァがとてもおいしい。
イタリアに近いせいだろうか?
十分に休み、体力を回復してから、埠頭を目指す。
埠頭まではすぐ、と見えたのが、けっこうな距離だった。 |
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シャトー・ディフ往復の切符を買い、
待合室で少し待ち、乗船する。
かなり気温が上がってきた。
日差しも強い。甲板にいると頭が熱い。
12時ちょうどに出航する。
船が動き出すと、風が気持ちよい。
旧港の湾内ではゆっくりだったが、
沖へ出るとスピードを上げ、イフ島がみるみる近付いてくる。
エドモン・ダンテスがこの島の牢獄に、無実の罪で14年間、幽閉された、
というのはアレクサンドル・デュマの創作だが、
岩波文庫で7册の『モンテ=クリスト伯(Le comte de Monte-Cristo)』は、
かつて、小生のいちばんの愛読書だった。
まだ若い時分に(もう勤めてはいたが)、スキーで靱帯をひどく痛めた。
ほとんど歩けない状態だったので、
定食屋に食事をしにゆくのに、片足で、苦労しいしい自転車をこいだ。
それ以外は、三畳間の下宿で、一週間、横になっていた。
そんなことがあったが、その間は、この本のおかげでぜんぜん退屈しなかった。
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フランス語のパンフレットをもらい、歩きながら開いてみると、
アルブレヒト・デューラーの「犀」が載っている。
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どういういわれがあるのか、
小生の乏しいフランス語の知識ではわからない。
見学した帰りに、ドイツ語のパンフレットももらい、
読んでみた。
すると、要するに、
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「1513年にインドの王からサイを贈られたポルトガルの王は、
これをさらに教皇に献上しようとした。
それで、リスボンからローマへ運ばれることになり、
その途上、マルセイユのイフ島に立ち寄った。
サイはこの当時のヨーロッパではまったく未知の獣で、大いに人々の関心を惹いたこと、
Valentin Ferdinand という人の、そのスケッチをもとに、
デューラーが木版画に仕上げた、」
ということだった。
「なお、このサイは数週間イフ島に留まったのち、ローマへ向けて帆走したが、
ジェノヴァ湾でひどい暴風に会い、岩礁にぶつかり、
船は粉砕し、この獣の死体が海岸に打ち上げられた。
それで、教皇が見たのはサイの剥製だった、」という話。
13時半の船で旧港に戻る。もう暑くて暑くて、また限界だ。
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ホテル脇の店では、オバサンが、この暑さでへばっていた。
片言で、お天気のことなど、ふたこと三ことおしゃべりをし、
写真を撮らしてもらう。
ホテルのお湯が出ない。ぬるい水のまま。
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