'04年・フランス漫歩の巻
06.リヨン
予報では35度ということだったが、さいわいそれほどではない。
ここのホテルの朝食は簡素で、クロワッサン、バゲット、それにバターとジャムのみ。
ただカフェ・ノワールはおいしかった。
まず、ペラーシュの駅舎の下にあるトラム(路面電車)乗り場へ行ってみる。
ホームの手前に乗車券の自動販売機があった。
ちょうど若い女性がその販売機で、券を購入していた。
トラムの券とメトロの券に区別があるのかを聞いてみたら、
「区別はなく、この券は両方に使える」ということだった。
ホームにトラムの係らしき人がいたので、パル・デュ-までの所要時間を聞いた。
20分ということだった。
さきほどの機械はコインしか使えない。
手持ちがないので、うえに上がってみると、新聞の売店があった。
そこのオヤジに
「カルネ(10枚綴りの券)はどこで買えるか」
「ここで」
ついでに、「メトロの路線図はあるか」
「ここにはない。案内所へ行ってくれ」
〜〜〜〜
リヨンに来て感じたことは、
これまで尋ねた相手のひとたちの応対が、総じて、親切で、かつ丁寧だということ、である。
にこやかな顔で、こちらの問い合わせに答えてくれる。
このことは、けっきょく、大都市パリと、地方の都市との違いのひとつ、でもあった。
〜〜〜〜
メトロA線に乗り、北へ向かう。
オペラ座のところで降り、西へ歩く。
橋(Pont de la Feuillée)を渡り、サンポール駅のところに出る。
家内が手洗いにゆきたいというので、駅の中に入り、ホームに出てみる。
ロ−カル線の列車が停まっている。
その方角から、運転士と車掌たちだろうか、3人づれがこちらへ歩いてくる。
われわれを見かけると「ボンジュール」と挨拶をして、駅舎内へ向かおうとする。
声をかけて、トイレのことを聞いた。
残念そうな顔をして、「ここにはない」
旧市街を南へ下る。
細い石畳みの道で、まわりの建物も古びている。
おそらく、住みごごちは必ずしも快適ではない、かもしれないが、
街としては趣きがあって、なかなかよい雰囲気を持っている。
〜〜〜〜
フュニキュレーア(ケーブルカー)の駅の前に出た。

案内所があったので、切符はどこで購入するのかを聞くと、

「メトロの券は持っているのか ? 」まだ未使用の乗車券を見せると、
「その切符で、このフュニキュレーアを往復、乗ることができるし、

1時間以内であれば、その同じ券で、メトロにも乗れる。」
pour tous とあるから、何にでも乗れるのかな、とは思ったが、

1時間以内云々のことは知らなかった。
ひょいと思いついて、
さきほど地下鉄で使い、何気なくそのまま、捨てないで、ポケットに入れておいた券を見せて、
「これはどうか?」と聞いてみた。
その刻印された日時を見て、首をかしげ、どうかな、という顔をするので、
「片道だけ使いたいのだが」と言うと、
「それなら大丈夫だ。」
家内がまた手洗いのことを持ち出す。
が、やはり、ここにもない。
階段を上り、フュニキュレーアに乗り込む。
発車までには、まだ、間がある。
車内に腰を下ろしてから、また思い付き、階段を降りて、
さきほどの案内所で、「路線図はありますか。」
「ある。」と小さいポケット用のをよこし、「大きい地図もやろうか?」
「どうもご親切に」と言うと、
礼にはおよばない、という仕草で、笑顔で、こちらの右肩の脇を軽くたたいて、
「ボン・ジュルネー(よい一日を)!」
〜〜〜〜
バジリク(パジリカ聖堂)・ノートル=ダーム・ドゥ・フルビエールの
脇のテラスからのリヨンの市街地の眺めは、なかなかに、よいものであった。
ここには手洗いがあった。
家内は駆け込んだ。
あとあとになってから、聞かされたことは、
「どうにもならないぐらい、おなかの調子が悪かった。
のこのこ地図をもらいにいったり、タラタラーと、なに悠長なことをやってんだー!
あそこ(聖堂脇)に(トイレが)あったのは、まったく天の助けだった。」
やれやれ、連れがそんなにひどい状態にあるとは、ほんとうに、露ほども知らなかった。
〜〜〜〜
テラスの横から下を見遣ると、急斜面の林の中を、つづら折りにくだる小道がある。
この道を歩いて帰ることにする。
木立の中の、じつに気持ちのよい道だ。
途中で山道は終わり、市道に出た。
まだ斜面は続くが、建物で埋まっている。
下を覗くと、建物群の隙間を、さらに下へとくだる石段が見えた。
段を降り切って、すこしゆくと、プリマシアール(大司教教会)・サン=ジョンの前に出た。
ボナパルト橋を渡り、ベルクーア広場に出、繁華街を北へ歩き、
市庁舎の東、オペラ座の北の広場で休憩する。
〜〜〜〜
地下鉄A線で南下し、途中、ベルクーアでD線に乗り換え、
サクス・ガンベッタで、さらにB線に乗り換えて、パール・デュ- に着く。

あしたのマルセイユ行きのTGVは、パール・デュ- 駅から乗らなければならないのだが、

この駅まで、地下鉄かトラムで来る必要がある。
が、やはり、地下鉄を使うと、荷物を持って、

A線からB線ついでC線へと乗り換えるのは、

かなり煩わしい。

それに加えて、地下鉄の駅とSNCFの駅はやや離れている。

見ると、トラムの停留所はSNCFの駅のすぐ前だ。

これではトラムの方がよさそうだ

from: Plan du métro et tramway de Lyon,
édition octobre 2003
ソンドイッチとタルトとを買う。

小銭が貯まりすぎたので、少々苦労して数えて出しした。

「合っているか?」

「パルフェ、メルシィ・ボクー」と、愛想のよいお姉ちゃんだった。

トラムに乗って、ペラーシュ駅まで戻ってみた。

乗り換えなしで、所要時間は178分だった。
〜〜〜〜
きのう買い物をした食料品屋で、
ボルドーワインとカンビールと柔らかめのサラミ(固めのはなかった)その他を買う。
〜〜〜〜
ホテルに戻るとフロントに年輩のオバサンがいた。
こちらを見かけると「サヴァ ?
こちらは笑顔で会釈をして、カギを受け取り、部屋へ上がる。
階段を上がりながら、思い出した。
そうだ、たしか「コモン・サヴァ ? 」のことで、「どうでした?」と言ってくれたのだ、
こちらも「サヴァ(よかったです、順調です)、メルシィ」と応えるべきだった。
〜〜〜〜
きょうのボルドーは、食料品屋に置いてある品物とはとても思えないぐらい、味がよい。
ほとんど空にしてしまう。
夜、けっこう暑い。
蚊がいる。何ケ所か刺された。
が、ここの蚊は毒素が弱いのではないか。さほど張れない。
少しづつ、フランス語にも馴れてきた。
片言で、ブロークンで、断片的なことしか喋れない、ということに何の変わりもない。
それゆえ、まあ要するに、感覚が鈍麻してきた、だけの話。
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