'04年・フランス漫歩の巻
05.TGVでリヨンへ
ガール・ド・リヨンの案内窓口で、
「レイルパスにヴァリデイティング・スタンプを押してくれませんか?」
「車掌に押してもらってください。」
これはおかしい。
が、相手(中年の色の黒いおばさん)は譲らない。
そして「11時発のリヨン・ペラーシュ駅行きのTGVの番線はA 」だと言う。
こういうことは毎度のことなので、別の窓口に当たってみることにする。
駅構内の入口付近の、横にいくつか並んだ乗車券売場(窓口)のところへ戻り、
列に並び、順番になってから、空いた窓口へ行き、申し出てみた。
すると、何の問題もなく、てきぱきとスタンプを押してくれた。
思い付いて、翌々日の予定の、リヨンからマルセイユまでのTGVの予約も、申し込んでみた。
が、目当ての列車はいっぱいで、一列車前のTGVの席しか空いていなかった。
発車番線の表示が出るまで、ホールで待った。
表示は、先ほど教えられたAではなく、Dだった。
席は8両編成の最後尾だった。
車内は快適で、ほぼ日本の新幹線に似ている。
それでも、パリからリヨン、そしてマルセイユへと至るTGVの路線は、専用線だと思うのだが、
「新幹線」と違い、高架ではなく、ほとんど地べたを走っている。
窓の外を見ると、あたりはほとんど広大な農地で、
フランスが豊かな農業国というのがよくわかる。
その農地と線路を隔てているのは、
見た目、高さ1メートルほどの簡素な格子状の柵だけである。
そこを、日本の新幹線のようなスピードで列車が走るのだから、たまげたものである。
席は4人掛けで、席の前の折り畳み式の板を広げると、結構まともな食卓になり、
持参の食べ物を広げ、ゆうゆうと快適な昼食がとれる。
〜〜〜〜
(リヨン)パール・デュー駅までは、2時間弱であった。
列車がパール・デューに着くと、乗客のほとんどが降りてしまった。
車内を見回すと、他に、二、三人いるだけである。
しばし間をおいて、やっと発車すると、すぐに終点の(リヨン)ペラーシュ駅に着いた。
ホームに降り立ち、出口へと向かう。
線路脇の詰め所にいる若い駅員が、ほんとうに物珍しそうに、こちらを見ている。
ペラーシュの駅前は、わりと閑散としていた。
もう、ひとの流れが、パール・デューの方へ移っているようだ。
〜〜〜〜
ホテルはカルノ広場のなかほど、右手(東)の小路を入ってすぐ、左手に見つかった。
部屋の窓の外側には、木製のごついブラインドが付いていた。クーラーはない。
部屋のドアの内側に、一人で(での使用は)59 €、二人の場合は73 €、と表示してあった。
こちらは、3人で(朝食込み)75 ということで、予約をしてある。
〜〜〜〜
ベルクール広場までぶらつく。
日曜日なので、店はほとんど閉まっている。
広場から右に折れ、ギョティエール橋のところで、しばしローヌ川を眺める。
帰りに、クロワッサン(クワッソンというような発音)を買う。
やはりここの店員も、早口で、値段を「アスワソンディス」と言う。
「パルドン?」と聞き返しても、同じように早口のまま、繰り返す。
un soixant-dix (170)が、つまり1ユーロ70(ソンティーム)である、と理解するまで、
蛍光灯たるこちとらの対応は、まだ、どうしても間の抜けたものになってしまう。
まあ、多少ひまがかかっても、ことは用が足りればいいのだから、どおってことはないが。
マクドナルドのオネエチャンに take away のことをフランスでは何と言うのかを聞いたら、
アポルテ(apporter)ということだった。
八百屋(エピシエというものだろうから、食料品屋か?)で、果物と缶ビールを買う。
ここのは冷やしてあった。
〜〜〜〜
テレビで明日の天気予報(Météo)をやっている。
パリは32℃なのに、リヨンだけ35℃、他の地方は29度ぐらいである。
リヨンは内陸だから、暑いのかしらん。
〜〜〜〜
夜の10時ごろ、ホテル前の通りで、若者たちがドンチャン騒ぎを始めた。
部屋の窓を開けっ放しにしていたので、外の声がよく聞こえる。
ワイワイがやがやが始まるとまもなく、だれかオバサンの声がする。
「パーティをやっているの ?
若者がボソボソと何とかかんとか、と答えている。
「テーゼーヴー!(お黙りなさい!静かにしなさい!の意か)」
再び若者がボソボソ(何を言っているのかは、わからない)。
また、オバサンが「テーゼーヴー!」
これが、大声でも、きつい声でもなく、明瞭で穏やかな声である。
相手の言い訳をさえぎり、諭すような調子で、
同じことを(他のあれこれのことは言わない)続けて5、6回言った。
静かになった。
「テーゼーヴー」は「テージェーヴェー(TGV)」に似ている。
ドイツの小さな子供が、
パントッフェルン(スリッパ)をカルトッフェルン(ジャガイモ)と呼んで、喜んでいる、
みたいな、幼稚な連想だが。
〜〜〜〜
今日は暑かった。
やはり、歳のせいか、涼しいほうが楽だ。
< 前のページ