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05.TGVでリヨンへ
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ガール・ド・リヨンの案内窓口で、
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「レイルパスにヴァリデイティング・スタンプを押してくれませんか?」
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「車掌に押してもらってください。」
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これはおかしい。
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が、相手(中年の色の黒いおばさん)は譲らない。
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そして「11時発のリヨン・ペラーシュ駅行きのTGVの番線はA 」だと言う。
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こういうことは毎度のことなので、別の窓口に当たってみることにする。
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駅構内の入口付近の、横にいくつか並んだ乗車券売場(窓口)のところへ戻り、
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列に並び、順番になってから、空いた窓口へ行き、申し出てみた。
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すると、何の問題もなく、てきぱきとスタンプを押してくれた。
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思い付いて、翌々日の予定の、リヨンからマルセイユまでのTGVの予約も、申し込んでみた。
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が、目当ての列車はいっぱいで、一列車前のTGVの席しか空いていなかった。
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発車番線の表示が出るまで、ホールで待った。
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表示は、先ほど教えられたAではなく、Dだった。
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席は8両編成の最後尾だった。
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車内は快適で、ほぼ日本の新幹線に似ている。
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それでも、パリからリヨン、そしてマルセイユへと至るTGVの路線は、専用線だと思うのだが、
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「新幹線」と違い、高架ではなく、ほとんど地べたを走っている。
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窓の外を見ると、あたりはほとんど広大な農地で、
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フランスが豊かな農業国というのがよくわかる。
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その農地と線路を隔てているのは、
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見た目、高さ1メートルほどの簡素な格子状の柵だけである。
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そこを、日本の新幹線のようなスピードで列車が走るのだから、たまげたものである。
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席は4人掛けで、席の前の折り畳み式の板を広げると、結構まともな食卓になり、
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持参の食べ物を広げ、ゆうゆうと快適な昼食がとれる。
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(リヨン)パール・デュー駅までは、2時間弱であった。
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列車がパール・デューに着くと、乗客のほとんどが降りてしまった。
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車内を見回すと、他に、二、三人いるだけである。
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しばし間をおいて、やっと発車すると、すぐに終点の(リヨン)ペラーシュ駅に着いた。
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ホームに降り立ち、出口へと向かう。
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線路脇の詰め所にいる若い駅員が、ほんとうに物珍しそうに、こちらを見ている。
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ペラーシュの駅前は、わりと閑散としていた。
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もう、ひとの流れが、パール・デューの方へ移っているようだ。
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ホテルはカルノ広場のなかほど、右手(東)の小路を入ってすぐ、左手に見つかった。
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部屋の窓の外側には、木製のごついブラインドが付いていた。クーラーはない。
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部屋のドアの内側に、一人で(での使用は)59 €、二人の場合は73 €、と表示してあった。 |
こちらは、3人で(朝食込み)75 € ということで、予約をしてある。
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ベルクール広場までぶらつく。
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日曜日なので、店はほとんど閉まっている。
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広場から右に折れ、ギョティエール橋のところで、しばしローヌ川を眺める。
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帰りに、クロワッサン(クルワッソンというような発音)を買う。
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やはりここの店員も、早口で、値段を「アスワソンディス」と言う。
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「パルドン?」と聞き返しても、同じように早口のまま、繰り返す。
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un soixant-dix (1と70)が、つまり1ユーロ70(ソンティーム)である、と理解するまで、
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蛍光灯たるこちとらの対応は、まだ、どうしても間の抜けたものになってしまう。
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まあ、多少ひまがかかっても、ことは用が足りればいいのだから、どおってことはないが。
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マクドナルドのオネエチャンに take away のことをフランスでは何と言うのかを聞いたら、
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アポルテ(apporter)ということだった。
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八百屋(エピシエというものだろうから、食料品屋か?)で、果物と缶ビールを買う。
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ここのは冷やしてあった。
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テレビで明日の天気予報(Météo)をやっている。
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パリは32℃なのに、リヨンだけ35℃、他の地方は29度ぐらいである。
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リヨンは内陸だから、暑いのかしらん。
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夜の10時ごろ、ホテル前の通りで、若者たちがドンチャン騒ぎを始めた。
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部屋の窓を開けっ放しにしていたので、外の声がよく聞こえる。
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ワイワイがやがやが始まるとまもなく、だれかオバサンの声がする。
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「パーティをやっているの ? 」
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若者がボソボソと何とかかんとか、と答えている。
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「テーゼーヴー!(お黙りなさい!静かにしなさい!の意か)」
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再び若者がボソボソ(何を言っているのかは、わからない)。
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また、オバサンが「テーゼーヴー!」
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これが、大声でも、きつい声でもなく、明瞭で穏やかな声である。
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相手の言い訳をさえぎり、諭すような調子で、
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同じことを(他のあれこれのことは言わない)続けて5、6回言った。
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静かになった。
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「テーゼーヴー」は「テージェーヴェー(TGV)」に似ている。
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ドイツの小さな子供が、
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パントッフェルン(スリッパ)をカルトッフェルン(ジャガイモ)と呼んで、喜んでいる、
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みたいな、幼稚な連想だが。
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今日は暑かった。
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やはり、歳のせいか、涼しいほうが楽だ。
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