'03年・イタリア徘徊の巻
3.ヴァチカン美術館、そしてテルミニの予約センター
朝の天気予報は見落としたが、日中の気温は、昨日(35度)よりも高くなった感じがする。
地下鉄に乗るべく、きょうは、宿のすぐ近くのカストロ・プレトーリオ駅(B線)へ行く。
こんどはもう、すぐにわかった。
きのう、切符の自動販売機が、ふたつみっつ、改札口の脇に置いてあるのを見ていた。
それを使って購入してみようと、硬貨を入れて、ボタンを押してみた。
反応がない。
こんどは、切符の種類と枚数のボタン押し、金額を表示させてから、硬貨を入れてみる。
やはり戻ってくる。他のどの機械もダメ。
改札口のところに若い駅員がいたので、事情を話すと、
「やり方を教える」
と言って、販売機の所に来てくれた。
「まずボタンを押して、合計 2.31 と出たら、

端数の1チェントを入れる。

それから2ユーロと3030が無ければ、40でもよい。

お釣りは出る。さあ、やってみてくれ」
その通りにする。が、出てこない。
脇で見ていてくれたかの駅員が、左のこぶしで、機械をドンドンドンと叩く。
券が出て来た。
「奇妙な機械だ。よそ者にはとても難しい。」
「その通り。日本から来たのか。これは日本製ではない。XY製だ。」
「それじゃ、XY人にはできるのか?」
「いやいや」
「ジョークだね?」
「そう。この機械はイタリア製だ」
お釣りは出てこない。
またもやドンドンドンと叩く。
こんどは叩きの利き目がなかった。
10チェンテージミだけの釣りだから、
「釣りは、出なくともかまわない。」
券に印字させて、ホームに入ろうとすると、家内の券は、なんべんやっても反応がない。

さきほどの兄チャンが、また出て来て、家内の切符を取り、仔細に見ていたが、

右隅の角が、かすかに、ちょっと目にはわからないほど、折れ曲がっているのに気づき、

爪先で、そこを丁寧に伸ばしてから、機械に入れてくれた。

こんどは反応した。

「ナーヴァスな機械ですね。」

「イタリア製だ」

ということだった。
〜〜〜〜
テルミニで A線に乗り換え、昨日のようにオッターヴィオ駅で降りたが、
今日は、ヴァティカーノの北端に回り、美術館(ムゼーイ・ヴァティカーニ)に入る。
内部は、進行方向は示してあるが、それがときに二手に分かれ、

しかも番号の表示がないので、二度、三度と行きつ戻りつしながら見て回った。
ミケランジェロ(Michelangelo Buonarrotti)の傑作『最後の審判』("Giudizio Universale")が

描かれているという Cappella Sistina(システィーナ礼拝堂)の場所も、
係員に聞いたのだが、よくわからず、娘の後についてまわって、ようやく辿り着いた。
ラッファエロ(Raffaello Sanzio)の『アテナイの学堂』

"Accademia di Atene")も観たが、

ラオコーン(右の写真)は見のがした。
Laokoon, Marmor (Vatikan. Museen)
Aus: Der Neue Brockhaus.
F. A. Brockhaus, Wiesbaden 1974
〜〜〜〜
クレシェンツィオ通りを東へ。
途中で出会った警官に聞き、間違いないことを確かめる。
カヴール広場を抜け、カヴール橋を渡り、

そのまま直進して、左寄りに、コンドッティ通りに入る。
高級品を扱う店が並んでいるが、我ら庶民には関係がない。
スペイン階段をちらっと見てから、石段に向かって右の方へ行くと、少し道が入り組んで来た。
昨日のこともあり、方向を確かめるため、ややしばらく地図と磁石とを眺めていたら、
Can I help you?
と、小柄な老人が、見るに見かねてか、話しかけてくきた。
それで、先に伸びる細い通りを指差して、Via Due Macelli かどうか尋ねてみた。

そして、イタリア人(外国人)らしくない英語のように聞こえたので、聞いてみた。
すると、自分はイギリス人であること、リビアに何年、南アフリカには何年いてどうのこうの、

そしてロンドンでは5年を過ごし、と早口で、経歴を話し始めた。
話がひと段落したところで、礼を言って別れ、道を先へと進んだ。
モンテ・クイリナーレの下をくぐる隧道の手前で右折し、小路に入り、

しばし行くと、フォンターナ・ディ・トゥレーヴィに出た。
二種類のパニーノ、娘はジェラート(アイスクリーム)、を買い、

噴水手前の日陰になった階段で昼食をとる。
〜〜〜〜
バルベリーニ駅から A線でテルミニへ。
FS(国有鉄道)の予約センターが目に入った。
レイルパス(トレンイターリア・フレキシィパス)に Validating Stamp を押してもらいがてら、

あさっての列車の予約をしておこうと、思い立ち、
整理番号発券機のボタンを押して、紙片を受け取る。
433番だった。
いまは200番台のひとの番である。
どれぐらい待つことになるのか、見当がつかないが、

ここは冷房がほどよく利いていて気持ちがよい。
ためしに待ってみることにした。
待ちながら、番号表示の電光掲示を見ていると、
券をもらったものの、用が生じて、あるいは時間に余裕がなくて諦めたのか、

呼び出しに応じないひとが多い。
それゆえ、番号の進みは、わりと速い。
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カウンタは9つほどあったが、
開いているのは、こちらからは仕切りの陰になって見えない4番と、目の前の6番だけだった。
目の前のカウンタのヒゲオヤジは、見ていると、若い女の客には愛想がよい。
中年の男などが何か尋ねると、無言で発券機を指差したり、顎をしゃくったりしている。
そのうちに、今度は、伝票のようなものをめくりながら、収支決算をし始めた。
けっこうな数の人が待っているのに、応対している係は、4番のカウンタの一人だけになってしまった。
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それでも、番号はスムーズに進み、待つこと1時間、やっと順番が回って来た。
4番のカウンタの係は、若い女性だった。
「レイルパスの使用開始は今日からでよいか。期限は来週の日曜日までだが、それでよいか?」
生返事で「ヤ」と言ったものの、少し解せない。
「あさっての8:55ES*(エウロスター)は満席です。」
その少し前に出るIC(インテルシティ)にする。
カウンタ前の二つの椅子に、娘と並んで腰掛けていたのだが、娘にも期限のことを

指摘されたので、
「さきほどあなたは、期限は来週の日曜、と言ったが、こちらはその後も、パスを使用したい。」
「あなたは先ほど、それでよいと言った。」
「これは、そもそもフレキシブルなパスであり、列車を利用する日を、私が選ぶことができる。」
相手のシニョリーナは、もう一度パスを見ていたが、やがて、
「わかった。私が間違えた。」
と言って、期限の日付けを、17/8 から10/10 に訂正してくれた。
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テルミニ駅の地下をぶらついていたら、ここにもスーペル・メルカートがあったので、まとめ買いをする。

1リットルの缶ビールもあった。
アランチャータ(オレンジジュース)は、Arance Rosse di Sicilia(真っ赤な色)や、

Arance Bionde(こがね色)を買ったが、どちらもとてもうまい。
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