'02年・イギリス瞥見の巻
15.ロンドン市内彷徨
 この宿の食事は8時から。
 いつも、食べ終えると、用意ができ次第、外出する。
 よく9時ごろに地下鉄に乗ったが、だいたいこの時間はラッシュアワーで、車内は勤め人風のひとでいっぱいである。
 サークル・ラインに乗り、ウェスト・ミンスターで乗り換えて、ウォータールーで降りる。
 まず、ウォータールー・ブリッジの方向へ行きたい、と思った。
 歩きながら、何人かのひとに、ほとんどが勤め人だが、道筋をを聞く。
 早足で歩いているのに、声を掛けると、皆がみな、立ち止まって、親切に教えてくれる。
 そして橋の近くまで来たが、たもとの建物が工事中だった。
 柵やフェンスがあり、どこが通れるのかがよくわからない。
 こんどは工事の人に聞いたりしながら、やっとテムズ川沿いの道に出た。
 しばらく行くと、大観覧車のそばで、そのカプセルみたいな乗り物に乗るべく、たくさんのひとが並んでいる。
 こういうものにはとんと興味がないので、その脇をただ通りすぎる。
 すると、すぐにビッグ・ベンが見えてきた。
 この界隈から眺める姿が、少しもやに霞んで見えて、なかなかよかった。
 ウェスト・ミンスター・ブリッジを渡り、ウェスト・ミンスターからジュービリィ・ラインでオックスフォードまで乗る。
 そこで乗り換え、セントラル・ラインでセィント・ポウルで下車する。
 が、ここでは、さほどの印象はなかった。
 連日の行脚で、こちらの感覚が少し鈍くなったかもしれないが、この寺院の回りのシチュエィションがいまひとつのせいもあるのではなかろうか。
〜〜〜〜
 ふたたびセントラル・ラインでボンド・ストリートで下車。
 デパートSに入る。
 ここの店員は(その一部かもしれないが)、珍しく、言葉を出し惜しむ。
 そのせいか?客も少ない。
 ハイドパークまで歩き、スピーカーズ・コーナー付近の芝生で昼食をとる。
〜〜〜〜
 そののち、マーブル・アーチ駅から乗り、ノッティング・ヒル・ゲイトでサークル・ライン乗り換えて、サウス・ケンジントン駅で降りる。
 大通り (Brompton Rd.) の東、Walton St. をしばらく歩いてから、大通りへ出て、「ハロッズ」へ入ってみる。
 ここの店員の応対はきちんとしていた。
 3階 (2nd floor) をぶらついていたとき、(ちょっと探し物をしていたので)目にとまった若い男の店員に尋ねてみた。
 あいにく、その探しものの名前を知らないので、
「スティール製の小さめのカップで、4つか5つのセットになっていて . . . 、そのセットが革のカヴァーで被われていて、旅行のときなどに使うもの . . . 」
 と、小生が覚束ない英語で説明すると、じっと耳を傾けていたが、
「どういうものであるかが分かった、
ただこの店のどのデパートメントにあるのかが、自分にはよくわからない。

このフローアの、あの向うの電球が点滅しているクリスマスの飾りの先に、旅行用品の売り場がある、そこに当たってみたらどうか。

それとも、そこになければ、6階のアウトドア用品の売り場にあるかもしれない」
 言われた通り、旅行用品の売り場を見たが、
 そこは旅行鞄やバッグの類ばかりで、捜すものはぜんぜん見当たらなかった。
 それで、リフトで6階に上がってみた。
 馬具一式などが並んでいるところを過ぎて、ひょっと右手を見たら、ガラスのケースの中に、目当てのものが飾ってあった。
 それを包んでもらっているときに、Taxfree のことを聞くと、
「5階のしかじかのところへ行け」と店内地図で指し示してくれた。
〜〜〜〜
 しかしながら、5階に降りてから、そのオフィスに行き着くのにけっこう難儀した。
 ひとつのフロアがいくつもに仕切られていて(この階は、地図を見たら、15、6のセクションに分かれている)、そして、仕切りごとに出入り口が付いている。
 このように各売り場が仕切られて独立しているデパートは初めて体験した。
 それで階全体はぜんぜん見渡せない。

Part of "STORE GUIDE",
Harrods Limited, Knightsbridge, London
 3、4人の店員に聞きながら、迷路を歩くような感じで、やっと辿り着いた。
 Taxfree のデスクには、身だしなみのいい青年が腰掛けていた。
 アフリカ系の、背の高い、きりっとした顔立ちのひとで、電話で話をしているところだった。
 こちらの様子に気づき、手と目で、客用の椅子を示してくれた。
 それで、そこに腰をおろして、話が終わるのを待った。
 まもなく電話での話が終わると、こちらに向き直って、
 パスポートの提示を要求し、ついで、申請用紙に国籍、住所、名前などを記入することを求めてきた。
 住所は「. . . Maebashi-City, JAPAN」と書いて、
「これでいいか」と尋ねると、
 書いたものを眺めてから、とつぜん日本語で
「マエバシ? ドコノ県デスカ?」
「アレ、日本語がわかるのですか。」
「10年前ニ、5年間、日本デ勉強シタコトガアリマス。デモ、少シ忘レマシタ。」
「あなたは私の英語よりも滑らかに日本語を話す。日本デハ、大学デ勉強ナサッタノデスカ。」
「ハイ、上智大学デス。」
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