'02年・イギリス瞥見の巻
14.ウィンザー往復
 朝、宿を出ると、夜半に雨が降ったようで、路面が濡れている。
 ヴィクトーリア駅へ向かう途中、すれ違う勤め人たちは、だいたい、傘を手にしている。
 これでは、傘なしではどうかな、と心配したが、幸い、日中は、雨に会わなかった。
 そういえば、天気予報では、しばしば、
「今日は晴れ、しかし時に shower がある」という言い方をしている。
 地下鉄サークル・ラインとノーザン・ラインとを利用して、ウォータールー駅へ行く。
 オペレータによっては、個別の行き先ごとのタイム・テーブルを出している。
 今日ウィンザーへ行くのに利用したオペレータ South West Trains がそうだった。
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 帰りはオペレータ Thames Trains の列車にしてみた。
 行きは、 Windsor and Eton Riverside 駅まで、直通ではあるが、51、2分かかった。
 帰りは W. and E. Central 駅から乗り、スラウ駅で、オックスフォードからのエクスプレスに乗り換えた。
 乗り換えがあるのだが、待ち時間を含めても、パディントンまで30分。
 しかも、この会社の車輛は乗り心地がよかった。
 スラウで乗り換えてから、ぼんやり窓の外を眺めていると、どこからか、
「何とかかんとか、プロブーム」という声が聞こえてきた。
「何だアクセントが違うではないか」とちょっと耳を済ましたら、
 やはりドイツ語だった。
 顔を向けると、はす向かいのテーブル席のグループの会話だった。
 楽しそうに話を交わしている。
 それで、邪魔をしては悪いと思い、しばし控えた。
 しばしののち、列車が速度を落とし、もうパディントンに到着する、その真際になってから、ちょいと近付いて、声を掛けてみた。
 小学生ぐらいの子供三人を連れた、やや若い夫婦と見えた。
 聞くと、やはりドイツ人で、
「家族で5日間の予定でイギリス旅行に来た、あしたにはもう帰る」
 ということだった。
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 今回のヴィクトーリア駅近くのB&Bは、入った当初から、部屋のテレビの映りが悪い。
 音声もときどき途切れる。
 ニュースも天気予報もさっぱり見られない。
 受信状況の悪い場所あるいは建物なのだろうか、とが思ったが、どうにも面白くない。
 だいいち、ロンドンの町なかで、電波の届きが悪いというのは、どう考えても変な話だ。
 このような安宿では、フロントに文句を言っても、すぐ新しいテレビに取り替えてくれるかどうかは怪しい。
 まず試しに、連れからヘアピンを借り、部屋の壁のアンテナ端子の中心に差し込んで、同軸ケーブルのピン・プラグと接触させてみた。
 すると映りがまずまず見られるぐらいになった。
 要するに、外部アンテナとよく繋がっていないことが原因のようだった。
 それで、バッグの中を、何か適当なものがないかと捜したら、うまい具合に、ビニール被膜の細いワイヤーがあった。
 それを裸線にして、ちょうどよさそうな長さに折り曲げ、(ピンと接触するように)アンテナ端子の真ん中の穴に突っ込んで、ピン・プラグ型のコネクタを嵌めてみた。
 すると、テレビの映りは完璧になった。 
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