'02年・イギリス瞥見の巻
6.キャンタベリィ詣に難儀、他あれこれ
 今日は、そもそもは Stratford-upon-Avon(ストットフォードンィヴンといった発音かと思うのだが、行かないせいもあって、確かめなかった)へ行くつもりだった。
 だが、片道2時間半をかけて往復するのが、億劫になった。
 それで、予定を変更して、キャンタベリィに行くことにした。
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 9時ごろに宿を出て、地下鉄セントラル・ラインに乗り、オックスフォード・サーカスで乗り換え、ヴィクトーリア駅へゆく。
 見上げると、電光掲示の故障か、それとも節電か、どうか知らないが、列車の表示が出ていない。
 近間にいた駅員に聞いたら、「次は10:22発4番線」と明解な返事である。
 観念し、あと1時間もひまがあるので、合間に、まだ手に入っていない鉄道地図と時刻表のことを聞いてみることにする。
 Tickets Advance の窓口に当たってみた。
 すると、窓口の職員は席を立ち、奥のデスクをあちこち往ったり来たりしながら探していた風だったが、
 当のものがなかったようで、「Information Office へ行ってくれ」と言う。
 そこで、教えられた案内所に行き、まずグレイト・ブリテンの鉄道地図のことを聞いた。
 これは即座に取り出してきた。
 値段を聞いたら、無料だという。
 ありがたく頂戴する。
 その地図には分岐点の駅はぜんぶ載っているので、頼りになると思えた。
 ついで、時刻表 (ABC Rail Guide) のことを聞くと、
「そこの W.H.Smith で買え!」
「本屋でか?」
「そうだ、こういう本だ。」
 と4、5センチの厚さの本をカウンタの上にドカッと置いた。
「それは、持ち歩くには重すぎる。」
「まさしく」と言って笑っていた。
 この時刻表は、なければ絶対に困るというものでもない。
 あれば重宝だが、こんな厚ぼったいものを持って歩く気はしない。
 購入するのは諦めた。
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 そうこうしているうちに、10時になった
 改札口(改札口はあったり、なかったり、駅によってさまざま)を通り抜けつつ、
「10:22発の Canterbury West (Station) 行きは4番線か?」
 と念を押した。
 こちらも、なぜか、すっかり勘違いをしていた。
 Canterbury East の方がよかった。
 そもそも、西駅か東駅かにこだわる必要がなかった。
 どちらの駅から歩いても、カセードラルまで行くのに、さほど距離に違いはない。
 とにかく、改札口の駅員は、10:22 という時刻を聞くや否や、
「10分前にならないとプラットフォームは決まらない。」
 そうそう、イギリスの列車の運行はそういうことだった。
 それはいいとして、少し経って、発車10分前になったので、もういちど聞いてみると、
 こんどは、
「なに、10:22 の Canterbury West 行きだって ?!
 それは、今日は日曜日なので走っていない。10:25 の Ramsgate 行きに乗り、Faversham で乗り換えろ。」
 と言うではないか。
 いやはやまったく、さんざん翻弄された気分だ。
 が、向うは、いい加減などころか、大まじめである。
 最初、間違った(日曜以外の)列車の時間を教えてくれた男(駅員)も実直そのものの態度だった。
 そして懇切丁寧に教えてくれたのだし、咎めるわけにはいかない。
 そういうわけで乗る羽目になった普通列車は、座席のボックスごとに乗車口(ドア)の付いた、古ぼけた気動車だった。
 が、これはこれで、こちらにとっては、物珍しい。
 直通列車に乗ってしまっていれば、出会わなかったかもしれない代物であった。
 扉の開け閉めはもちろん手動で、
 降りるときには、自分の座席の脇の扉を開けて降りることになる。
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 乗り換えるためにファーヴァシャムで降りたのだが(11時45分)、
 この駅で、キャンタベリィを経由ドウヴァー行きの列車は、12時15分発ということがわかった。
 またもや、あと30分も待たなければならない。
 お昼になったし、そのあいだに食事にしようかと思ったが、
 今日はあいにく日曜日ということで、駅の構内の店はすべて閉まっている。
 駅前の通りを見渡すと、住宅が散在しているだけで、何の店もない。
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 とにもかくにも、やっとキャンタベリィ・イーストに着いた。
 東駅を降りてから、ほぼ目の前の、車道を跨ぐ歩道橋を渡り、城壁の内に入る。
 ついで、少し西寄りに回ると、カースル・ストリートに出る。
 この北東へ伸びるカースル・ストリートを歩いてまもなく、正面遠くに、もう、大聖堂の先端が見え始めた。
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 Canterbury Cathedral 内では、至るところに、「Crypt 内では云々」と表示してある。
 浅学にして、Crypt の何たるかを知らなかったので、通りがかりの男に聞いた。
「ここのことだ。」
 ここ、では、わからない。
 別な男に聞いたら、
「教会の地下にある "cemetry" のようなものだ。」
 それでやっとわかった。
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 帰りの列車の時間を、降りたときに、駅舎の外壁に掲げてあった時刻表で確認しておいた。
 見物を終えて、東駅に戻って来ると、ちょうど発車まであと10分であった。
 もういちどよく確かめてみると、ヴィクトーリア駅への到着が16:46 とある。
 直通列車なのに、2時間近くもかかる。
 が、そんなことに文句を言っても始まらない。
 構わずに乗り、ほぼ定刻に発車し、来るときに乗り換えたファーヴァシャムに着く。
 と、かなりのひとがホームの反対側に停まっている列車に乗り移る。
 それで、こちらも真似をして降りて、
 乗り移るときに、乗客のひとりに尋ねた。
 すると、「ヴィクトーリア行き」とのことである。
 車輛も新しい。
 これは、直通列車よりも30分以上も早くに、ヴィクトーリアに着いた。
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 鉄道地図が便利だったので、もう1部もらっておこうと、インフォメーションに立ち寄る。
 係員が朝のひととは別な人に替わっていた。
 順番待ちをしながら、ただ、地図をもらえまいか、と聞けばいいな、と思っていたら、
 朝の男が、脇からとつぜん現れ、眼が合った。
 向うも、気がついたようで、
「戻って来たのか」と言う。
 いささか慌てて、前にもらった地図を取り出し、
「これはとても役に立った(これは本当)、私の娘のために(これは方便)、もう一部もらえまいか。」
「イャー」と言って、折り畳んである地図を、カウンタの向うから、サーッと滑らせてよこした。
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 ロンドンの鉄道駅は、終端駅 (terminal station) ばかりである。
 ケンブリッジへ行ったときは、キングス・クロス駅から乗った。
 オックスフォードへはパディントン駅、今日のキャンタベリィ行きはヴィクトーリア駅だった。
 ただし、これらの終端駅は、すべて、地下鉄と連絡しているので、なにも不便はない。
The rail routes map above:
from "Map and guide to using the National Rail network, Second editon." May 2001
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 明朝は早立ちなので、受付で支払いを済ませておく。
 宿の支払いは幾らになるか、と言うと、きちんと一泊分の Deposit を差し引いた額を請求される。
 しかも、E-mail で取り交わした通りの、割り引き金額であった。
 カギは、やはり、ドイツのパンジオーンでもそうだったが、部屋の中に置いて行ってくれればよい、といことだった。
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 テレビの1チャンネルは BBC
 3チャンネルは Sky news
 これは民放のニュース局といったものと思われるが、主に、主に三面記事、スポーツ、マーケット情報、天気予報を流している。
 この3チャンネルをよく見た。
 連日、例の、Missing girls のニュース。
 失踪事件が起こったのは先週の日曜日 (8月4日) の由、
 場所は Soham, Cambridgeshire
 失踪の30分前まで H.W. の自宅のコンピュータでチャットをした形跡。
 警察は捜査の人員を増やした、云々。
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