'01年・ドイツ再訪の巻
16.フランクフルト、駅の預かり所と空港のカウンタ
 フランクフルト中央駅で、荷物を預けようとするが、コインロッカーはぜんぜん空いてなかった。仕方なく手荷物預かり所へ行く。
 預かり所には、ユダヤ系と思われる小柄なひとがいて、その人に荷物3個を預けた。
 預けるときに、思い付いて、小銭がたくさんあるから、請け出すときにマルクにしてくれ、と言っておいた。
 が、Sバーンでハウプト・ヴァッヘまで行き、レーマーの界隈を歩き回ってから、また中央駅に戻ってきて、
さて荷物を請け出そうとしたら、あいにく、係りがさきほどとは別な人で、顔立ちは典型的なドイツ人といった中年の男性だった。
 「20マルク。」
 2時間そこらで 20マルクとはけっこうな額だ。
 今朝、ケルンの駅でも荷物を預ける用があったが、そこは完全自動で、
あとで荷物を引き出したいときには、引き換え証がわりのカードを入れれば、荷物が戻ってくる仕組みだった。
 しかも、けっこうな荷物3個がまとめて入り、24時間で、たった4マルクである。
 しかし、人の手がかかると高くつく。
 文句は言わずに、20マルク紙幣を出したが、
こんなに取るのだから、手許にたくさんあった小銭を、やはり、ついでにマルク硬貨に替えてもらおうと、
 「これを受け取ってくれないか」と言うも、
 「できない」の一言。
 とりつく島もない。
 かの小柄なひとが脇に控えていたので、
 「厳格だね」と小声で言うと、
肩をすくめて、「電話をかけるときにでも使えばよい。」
 「そういうことは簡単にはできないのだ。」
 「確かに、」と同情してくれる。
 インビスの売り子も、そういえば、頑として、替えてはくれなかった。
 そもそも、客であっても、両替そのものはしない、ということか。
〜〜〜〜
 またSバーンに乗り、空港駅へ。
 今度は、2週間ほど前に通ったコースの逆なので、だいぶ勝手がわかり、
空港駅から、スカイ・ラインでターミナル2へ、そして目的のホールD へ、とすんなり行くことができた。
 5時ごろ、いちおう様子を聞いておこうと思い、
休んでいたベンチから少し離れていたが、航空会社のチェックインカウンタのところまで行ってみた。
 ドイツ人女性らしきひとがいるカウンタがちょうど空いていた。
 「○○便にはまだだいぶ早いが、いつからチェックインができるか?」
 「今からでもできる。」
 「ほかに家族がいる。」
 「全員分の航空券、それに旅券が必要です。」
 「当人がここまで来なければならないか?」
 「いいえ、チケットとパスだけ。」
 「禁煙席を。」
 「今は全部がそうです。」
 「はいはい、それは昔のことだった。」
 「ハハハ、そうです。」
 「搭乗は8時20分から。」
 「ちょっと待って、私はすぐ忘れるから、メモをしておく。」
 「ハハハ」
 「私は年をとった。」
 「アハハハ」「飛行機の前の方に、窓際のよい席に、しました。」
 「Ausgezeichnet!(すばらしい)。」
 紙片をこちらに示して、「ただし、ここに書いてあるように、緊急の場合には、手助けをお願いします。」
 少々合点がいかなかったが、「承知した、が、その必要がないことを願う。」
「ハハハ、私もそう願う。」
 預ける荷物のことを聞かれたので、一つだけ預けることにした。
 荷物を引いて、預けるためにカウンタに戻ろうとして、受付の場所を(ひとを)間違えた。
 場所が違うことを指摘され、あらためて、先ほどのドイツ人のところに行き、
 「私は受付けを取り違えてしまった。」
 「ハハハ、どういたしまして。」
 それから、タックスフリー・ショッピング(免税適用購入)の払い戻し金の受け取り方をも説明してもらう。
 これで済んだかと、ベンチに戻ったが、
またもや、荷物を預けたけれども、クレイム・タグを貰っていないことに、はたと思い当たった。
 「何度も煩わして、申し訳ない。」
 「いいえ、ぜんぜん。」
 クレイム・タグのことを尋ねたら、今は搭乗券にそれが記録してある由。
 一切合切のことを、しつこく、何遍も聞いたのに、
いやな顔をするどころか、じつに愛想よく、かつ丁寧に教えてくれた。
 ドイツ人も、当たり前の事だが、十人十色。
 それにしても、窓口の女性が、応対のときに、面白がって声を立てて笑うというのも、おもしろい。
〜〜〜〜
 出国審査を終えてから、Taxfree Shopping の払い戻しの手続きをした。
 面倒はなく、付加価値税は16%だが、(手数料を取られて)10%ちょっとの金額が、手許に戻った。
〜〜〜〜
 手荷物預かり所では、なんとか小銭を減らそうとして、不首尾に終わったりしたが、案ずることはなかった。
 搭乗者エーリアに入ってから、搭乗の時間の少し前にでも、最寄りの両替所で、替えてもらえばよい。
日本円(紙幣)に替えるためには、手数料を含めて、(何マルク何ペニヒと)半端な金額になるから、マルク硬貨やペニヒ硬貨がだいぶん貯まってしまっていても、少しはあとに残るが、大部分は、処分できる。
〜〜〜〜
 時間になり、機内に入ったら、席は2階の、両脇が非常口になっていて、そのために、きまりで広々と空けてある場所だった。
 短い脚を、かつて怪我の功名で一度だけ乗ったことのあるファースト・クラスのように、ゆうゆうと伸ばせるほどに、広い。
 かのカウンタの女性に、手助け云々のことを言われたときには、話がよく呑み込めなかったが、搭乗してみて初めて合点がいった。
Flughafen Frankfurt Main 8月21日、21時20分ごろ
(この巻、了)
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